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「おい、こんな所で何をしている」
怪物が消えてひととき、捜索者等がシアのもとへ辿り着いた。それには魔法使いも参加しており、事情を説明された後に彼は直ぐに法院へ戻るように促された。そして翌夜、シアは白王に城へ呼び出された。
「シア殿、あれからもあの魔法陣とやらの試験をしているとの話を耳にしたのだが、それは事実か」
「事実だ」
「被験者をあの様な遺体にして、まだ続行するとは如何なものかと。皆も怯えているのだ」
「あれは失敗だ。我に責がある。しかし必ず魔法にしてみせる。出来上がれば、魔法もさらに広がりをみせる。あれで止めるなど、頂として恥だ。
そして怯えているというのは、そなただけではないのか」
白王はまた、シアの発言に怒り彼へ罵声を浴びせた。それをシアは目をそらす事無く聞き続け、白王の罵声が止んでひととき、シアは彼に背を向けた。
「何かあったのか?我の知っている白王は、この様ではない。我は新たに魔法を広げる。ひとときも無駄にしたく無い。邪魔をするな」
「……!…もう一つ。大きな人の様な怪物が、この国へ逃げ込んだ。お主は雪原へ出ているのだろう。何も知らぬか」
「さあ、知らぬ」
「隠すような事をすれば、また処罰の対象になる事を忘れるな」
それを白王が言い終わらぬ間に、彼は広間から出て行き扉の閉まる音が響き渡った。
「腹立たしい腹立たしい。実に腹立たしい!あの様な若僧が法院の頂などと。わしへの無礼の数々、いずれ思い知らせてやる」