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城下町やそれぞれの町、雪の国が夜にも関わらず騒がしい頃、シアは雪原に居た。そして誰しもが想像するであろう出来事として、彼は凶報の元である人造人体に遭遇していた。魔法陣を前に焚き火をくべているそこに、醜く大きな怪物の様な者が現れた事に、流石にシアも驚いた。



「何だ、お前は」



脇腹に手を当てながら、膝を着くように怪物は彼の前に沈んだ。シアは持っていた枝で指すようにして、傷の箇所を確かめて行った。「あまり、優れ得ていないが…」と、雪を手に取るとそれを傷口に押さえつけながら囁いた。大きな傷を塞ぎ終えると、怪物の口が雑に縫い合わすように塞がれていることに気づいたシアは、唸り続ける怪物の口を切り開いた。



「お前は何だ。言葉は分かるのか?」


「ころ、してくれ。私は、何なのか。もう、分からない。分かりたく、ない」



言葉が通じ話せた事に驚きながらも、シアは涙も流せずに泣きながら話す怪物の言葉を聞き続けた。続く罪と死を望む事を話すそれを見て、シアも口を開いた。



「我は今、そなたを疎んでいる。恐らく我の持ち得る気は、そなたと同様に泣き喚いている。しかし我はそなたのように、言葉にならない。こんなにも様々な魔法に仕え、自らの気を言葉に現す事が出来ないなどと。分からないものだ」



シアが話して居ると、先程まで怪物が大きな唸り声を上げていたことで、捜索していた者達の掲げる火が近づいて来ていた。それに気付いて起き上がった怪物は、身を隠そうとその場を離れようとした。



「何処へ行く。追われているのか?」


「そうだ。傷の手当て、ありがとう」


「待て。何故逃げる。死を望むのではないのか」


「捕まれば、何をされるか分から、ない。捕まれば、死は無い」


「…それならば、此処から姿を消させてやる。死を伴うかも知れないが、

それを望むのならば構わないだろう。どうだ?」



シアの問いに頷いた怪物は、促されるままに魔法陣へ立った。捜索者等の声が聞こえる中、シアは手を翳して囁いた。魔法陣が光り始めると、瞬く間に怪物の姿は無くなった。




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