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しかし城へは彼の噂ではなく、隣の国からの凶報が届いていた。それは極々少数の者にしか伝えられない内容で、人的に造り出された人体が、白の国方面に逃げ出したと言うものだった。
「そちらの被害は」
「申し上げ難い事ですが、造り出した本人が重体になり、死に瀕しております。そしてその者はこの国の、法院とやらからの身の出。逃げ出した人体は、普通の人間よりも大きく、容姿は醜いので見れば分かると。捜索の許可を得たいのと、発見の際には殺しても構わないとの事。とにかく速やかに、一般の者をお守りください」
それを聞いてリアリと白王は、それぞれに動いた。白王は魔法使い達に指示を出すと、彼等は直ぐに散り散りに街へ防護魔法を施し、リアリは直ぐに城を出ると彼女が訪れたのは法院だった。
「ヒスイ様、居るでしょう」
「どうして此処に居ると。どうされたのですか」
夜も深まろうかという頃に、突然現れたリアリに数人の魔法使い達は驚きを隠せなかった。そして荒れた口調に呼ばれたヒスイは、困惑しながら姿を見せた。
「シア様の父が見つかったわ。彼は何処へ?」
「今の私には、分かりません。セイレン様と御一緒では?」
「あの子は今城に居ます。恐らく雪原に出ているのね。彼ならば心を配らせる必要は、無いと思うけれど。貴方達、白王からの報せは無かったのですか?直ぐにそれぞれの街へ、防護魔法を施しに行きなさい。危険な者が、近辺に迷い込みました」
リアリの言葉に魔法使い達は、慌てて外へ出て行った。それに続いて彼女が出て行こうとした時に振り返ると、ヒスイはまた奥の部屋へ戻って行こうとしていた。
「貴女は、彼を探さないの?」
「私は法院に残ります。誰かが訪れた時の為に。それに今の私では、探しても見つけられません」
リアリはそれを聞いて「そう」と呟き出て行くと、ヒスイは静かに奥の部屋へ戻って行った。