16
その場に居た皆がその状況に息を飲む中、シアは方向を指差して雪車へ乗り込んだ。それに続き白王やリアリにセイレンも雪車に同席し、彼等の後を追える者はそれに続いて行き、その他の者は散り散りになって行った。道中のひととき、シアは霧を払い厚い布を被り眠りに落ちた。そして以前夜中に彼が描いた魔法陣へ辿り着くと、起こされたシアはゆらりと無言に雪車を降りて魔法陣を確認した。覚めきっていない目が見たそこには、何も無かった。シアに続いて白王等も、それを理解した。しかし彼の目は覚めきらないままに、魔法陣の中心に積もる雪が、盛り上がっていることに気がついた。周りに人が集まりつつある中雪を掻き分けると、そこにはひび割れた地面から黒ずんだ足が突き出していた。そしてまた、その場に居た皆がその事実を確認した後に、遺体が掘り起こされた。全身が黒ずみ、無理矢理拗られたように身体が捻られていた。シアを除くその場に居た誰もが、恐怖を抱き目を逸らし口を覆ったが、彼はしばらく遺体を見つめるとその場から少し離れた場所へ移動して、腰を下ろした。そのまま遺体が運ばれて行く様や、その付近の状況を眺めながら次の試みのことを考えていた。そのまま時は過ぎ、日が落ちる頃に彼等は街へ戻ったが、セイレンですらその日、シアへ声を掛けられるものは居なかった。
そんな日が終わり、誰もが寝静まって居るであろう朝靄の立ち込める時、ヒスイはひっそりと遺体が安置された場所へ赴いていた。彼女はぐるりと遺体の周りを歩きながらながらしばらく見ると、雪原にある魔法陣が描かれた場所へ向かった。朝日に迎えられる頃、ヒスイは魔法陣の場所へ辿り着いた。魔法陣の辺りを調査していた数人の魔法使いに混じりながら、彼女は魔法陣を見つめた後に、掘り起こされた様子や辺りの様子等を見てまわった。そしてまた最後に、しゃがみ込み魔法陣を眺めて見つめた後、そっと城下町へ帰って行った。