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そして契約を締結したあと、その足で彼等は城から少し離れた雪原へ出た。昼の間という事もあり、大勢の人々が彼等に続いた。霧を纏うシアの姿を初めて見る者は、見た事のある者とまた噂を潜め、大勢の中には新たな魔法の試験の度に集まり、反対運動を続ける者達も集まっていた。手に枷をはめられた男が、魔法陣の中へ連れられ中央に腰を下ろした。項垂れる姿勢に落ち着く男を、その男の家族や危害を加えられた者の家族が魔法陣から少し離れた所で見守り、シアが魔法陣へ向けて手を翳し囁こうとした。しかし反対運動をする者達が、いつにも増して声を荒らげる。それは彼の異様な容姿をも罵声に加えて、付け入るように浴びせられていた。それらを聞いていた被害者の家族が、堪えきれずに涙を流し詰め寄ろうとした時、横目にそれが見えたシアは、翳していた手を下ろし反対する彼等の方へ歩んだ。



「聞くが、そなた等はあの罪人の罪を知っているのか」


「人を殺したのでしょ。一人ではなく、十と数人を」



問い掛けたシアに、反対行動を率いている女性が答えたそれを聞いていた被害者家族の者が、表情を強ばらせ口を開こうとしたのを遮るように、彼は言葉を返した。



「十と数人では無い。十と三人だ。性別は女性のみ。そしてただ、殺したのではない。襲い犯し口を塞ぎ手脚を縛り、息絶えるまで致命傷に至らないであろう身体の部位に刃物を突き刺し続け、意識を失う事も与えなかった。それが、幾度と時間は分からない。その男の話と、遺体を照らし合わせた結論だ。さらに言えば、十と三人を殺したのでは無い。女性を狙い命を奪う行為を十と三度に及んだのだ。償う方法など無いに等しい程、想像に値しない。しかし、この白雪の国には法がある。それに則り、我はこの男とその家族に契約を結んだ。これから行う魔法は、まだ人体に試みた事がない。生きて戻れるか、命を失うか。痛みも苦しみも、その過度も不明だ。強制でも無ければ、家族へ報酬も与えられる。生きて戻れても男は引き続き投獄され、家族には報酬はあれどこの先も償いを、要求されるであろう。被害にあった者達の家族は、行き場も無い気を持ちえながら時を過ごし続ける。時が経とうと、何をしようとされようとだ。これらを踏まえてもう一度問う。そなた等は、あの罪人の罪を知っているのか」







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