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そして彼が描き終えたそれは、様々な模様や文字で陣を形作る様に描かれていた。その日から、夜な夜なシアはその魔法陣を使い、試行錯誤を繰り返した。さらに殴り書かれた物書きが増えた数日後、彼はまた城へ向かった。
「ヒスイ様が、法院から離れたそうだ。それも仕方あるまい。あのような男の下には、居られんのだろう。昼間は引きこもり、夜になると顔を見せる。さらにはあのように魔法の力が、他の者より飛び抜けておる。それに加えて、異質な魔法を暴力へ振るうとは。あれでは、まるで化け物だ。お前はまだあんな男で良いのか」
「暴力は、確かにいけません。それに、私も昼間にお出かけしてみたり、
他方へ堂々と顔を出したいわ。でも...」
白王とセイレンが話していると、広間の大扉が開いた。入ってくるシアを見て白王は身構え、セイレンは身を正すように咳払いをした。そして彼の持ち込んだ話を、白王は拒んだ。
「ならぬ。法院の頂とはいえ、先日民に暴力行為を起こした輩に違いはない」
「我は法に、許可を求めているだけだ。そなたに許可を求めているのではない。極刑を渡され死を与えられる者との、契約に立ち会えと言っている」
「その物言いはなんだ。王と対峙して、頭が高いのではないか。法に許可だと?この私が法だ」
言い争う間に、また広間の扉が開いた。いつもの様に尖った足音を響かせながら、リアリがその場を割り込むように二人の間に入った。
「あなたが法ですって?いつからそんなにも、お馬鹿になったのかしら。
私が許可します。この国の女王として。その男は、私がその座へ座らせているだけ。ずっと座っているのは、疲れるもの。いつもご苦労さま」
「ふざけた事ばかり言いおって。わしは認めんぞ」
「何をそんなにもお怒りになっているのかしら。暴力沙汰のことかしら?
それなら私は、理由を知っていますわ。ね、シア様」
「理由を知っているだと?何故だ!申せ!」
「貴方の、知らない男に聞いたのよ。契約を許可します。後日、白王と私もその場に同席致します。お見苦しい様を、申し訳ないですわ。お許し下さい」
頭を下げたリアリにシアも頭を下げ、彼は白王やセイレンにも頭を下げて背を向け、扉へ向かった。それを呼び止めようと、名前を呼びながら駆け寄ろうとしたセイレンへ少し顔を向けたシアイは、「すまない」と言ってそのまま出て行った。