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それから数日後の夜、久しくシアはセイレンと共にいた。城下町にぽつりぽつりと明かりの灯る店がある中、二人は散歩をしていた。二人を見た人々は手を振る者や声を掛ける者、ただ見るだけの者と様々だった。
「お仕事、お忙しそうですね」
「ああ、会う時を削りすまない。同行させる事が出来れば良いのだが、少々危険が伴うのでな」
「…でもヒスイ様は、ご一緒ではないのですか」
「いいや、我一人だ。最近は、顔を合わせる機会が少なくなった。本来ならばもう少し、今携わる事柄について話したいのだが、あれにも相当に負担を強いてしまっている。何か、思うところがあるのだろう」
「…そうなのですね。ヒスイ様はとても美しく、魅力的な女性です。そんな女性がシア様の側に居ることに、頭では理解していても持ち得る気が、あまり良いものではありません」
「それに心を配る必要は無い。そのような思いをしていたのか、すまない。幼い頃からの馴染みだ。今そなたから、我の気が離れることは無い」
そして城へ辿り着き、シアへ手を振ったセイレンが広間へ入ると、白王が彼女を呼び留めた。
「今晩も遅い帰りだな」
「シア様と居たの。彼ならば、良いでしょう」
「彼の事だが、何か以前と変わった所はないか」
「以前と変わらず、素敵な方です」
「そうか。何か異様な事があれば、報せなさい」
白王が話し終わる頃には、セイレンはその場に居なかった。彼女は寝仕度を整えると、床へ倒れ込み窓から見える月を横目に少し見た後、それに顔を背けて眠りについた。




