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朝を迎えようかという夜が遠のく頃、ヒスイが法院で身支度を整えているとシアが帰ってきた。彼女やその場に居た魔法使いに医師と彼は少し話すと、去り際に血の研究材料を置いて来た場所を示し伝えた。シアが居なくなったあと、ヒスイ達は異様な違和感に気が付いた。それは彼の黒い衣類と、血生臭さだった。彼女は自室へ帰り眠ろうとしたが、彼の違和感が気に掛かり、身体を起こしで動ける者を集め、シアの示した場所へ向かった。
示された場所に近づくに連れて黒い鳥の鳴き声で音を埋められ、その色が足されるように濃くなっていくと、轌では進めなくなり歩き始めた彼女等への目印かと思わせるように、雪が赤く色付いていた。黒い鳴き声赤い道、白い綿紛う雪や群がる鳥と目にして、辿り着いた彼女等が見たものは、目を反らすことすら許されない光景だった。
彼女等が近付き黒い色が暴かれる様に飛び去っていくと、そこには大きな赤黒い物体が三つそれぞれに大きな氷柱に串刺しにされていた。そしてそれが大きな獣だと気付き、さらにそれぞれ首を落とされている事にも気が付いた。目を背けたくとも、状況に理解が追い付かずに目を疑う事が繰り返された。見れば見るほど、考えれば考えるほどに、ヒスイ以外には疑問が溢れた。彼女にも疑問が浮かばない訳では無く、ただ彼を身近で見てきたが故に想像が出来たのだ。人よりも大きな獣を、三体も串刺しにした方法も、何故首を落としているのか、そこには彼の底知れぬ力と、人並みの弱さが垣間見えたものだった。そこまで理解出来たヒスイなだけに、胸元に痛みを感じた。その痛みは彼の光が遠のき見失うような事よりも、手に取れる程に身近に感じられたことに近かった。そしてそれは、彼の光が近づける程に弱くなっている事にも感じ取れた。