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そして少し拓けた場所までシアが来ると、一匹の獣が唸り牙を見せながら彼の正面へ姿を見せた。射し込む月明かりが照らしたそれに気づいたシアだったが、見据える彼の目には全くの感情が表れていなかった。



「そなたに、我は喰えんぞ」



睨むなどにはほど遠く見つめると言うほどにも漂わず、さらに意思も意図も感じられない程に、ただ獣と視線を合わせながらそう言ってシアは足を止めなかった。自分の存在に全く動じない彼に、陽動として姿を見せた獣は明らかに動揺を見せていた。後ろに飛び跳ね距離を取ると、獣は咆哮してシアへ飛び掛かった。それに対して彼が左腕をかざし一言囁くと、獣の側で燃え盛る様に小さな爆発が起こり、炎に包まれた獣は後方へ吹き飛んだ。それを機に潜んでいた獣達もシアへ飛び掛かったが、彼はまた一言囁き足下の雪へ飛び込みながら両手を叩きつけた。


雪は瞬く間に氷柱となり広がると、獣達はそれぞれに切り裂かれ突き刺さり、多大な傷を負っていった。脚を引きずり血を滴らせ退こうとする中、炎を浴びた獣がようやく起き上がり、それも茂みへ逃げようとしたその時、森の中から木々を薙ぎ倒そうかとする勢いで、大きな獣がその獣の首元へ噛み付き覆い被さった。周りの獣達はそれを見て、森の中へ散っていった。噛みつかれた獣はそのまま振り回されると息絶え、さらに後脚を食い千切られ放られた。そして大きな獣は肉を飲み込むと、目の前に居るシアに気づき、悟った。得体の知れない黒い霧の奥で薄らと笑みを浮かべる、自分よりも圧倒的に小さい体格の彼に喰われると。




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