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「この度は、御迷惑と心配りをさせただけでなく、彼の身体を安全に看病をして頂き感謝しています。側に居られたのが、セイレン様で良かった」
「いえ。いいえ、私こそ何も出来ずに。慌て騒々としただけで。何も出来ないで」
涙を堪えながらのセイレンは、差し出された葉湯に温まりながら、ヒスイに意地を張る様な振る舞いをした自分を恥じていた。
「気晴らしに、お散歩でも行きませんか?川沿いで、とても可愛らしい
小さな白い兎を見掛けたんです。初めて見た兎でしたけれど、もしかすると、また見つけられるかも知れないですよ」
「白い兎…?」
セイレンは白い兎と聞いて思い付いたように、両手を重ねて雪兎を作り出した。それを見たヒスイは、目を見開いて驚きを隠せずにそして笑顔を見せた。
「ああっ、いけません!」
セイレンの声も間に合わず、喜びながらヒスイは雪兎に触れてしまい、それはただただ崩れ雪解けていった。その崩れていく雪兎を見ながら、セイレンはシアと二人で雪兎を作ったあの夜を思い出していた。
「私一人では、この子に触れられるようには作れなくて…でも」
「もう一度、お願いできますか?」
そのヒスイの願いに、何故か心の奥底で濁る気持ちが響いたセイレンだったが、もう一度雪兎を作り出した。それを見たヒスイは囁き始めると、雪解けた水滴に触れた。そうするとそれはほんのりと青白く光り始め、側に来た雪兎はその光る水滴を飲み始めた。染み渡るようにその光は雪兎に広がり、光が収まるとヒスイはその雪兎をそっと撫でた。