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そして陽の下へ出たシアに、幼い時の記憶が蘇っていた。先代から外出を禁じられていたが、理由を知ろうとして傷みや痛みを知ったあの頃を思い出しながら、殆ど初めて見る景色に目が眩んでいた。そして城下町の大通りに出ると、彼の容姿はそのままでも容易に視線を集めることにも増して、霧を纏う姿に見る者全ての目を留めさせて行った。
「シア様!?陽のもとを歩いて良いのですか、それにその姿は…」
「心配り感謝する。驚かせてすまないな」
魔法使いがシアに気付き声を掛けて、それを見ていた周囲はようやく彼の存在を知った。その存在が響かせた声の広がりに、靡き身を寄せた者がさらに声を広げて行ったが、それ等の多くの声は彼の異様な姿に恐怖を懐き、さらに霧の奥に居る彼の容姿に魅了されながらも、それの背負う肩書きが様々な色憶を足していった。水面に滲み広がる声を置き去りに、シアは城へ辿り着いた。
「どうなされたのだ。その姿は…」
「急な訪問を、そしてこの様な姿を許してもらいたい。セイレン様とお会いしたいのだが」
シアの姿に、驚きを隠せない白王や城内に気を留めながらも、彼はセイレンを待った。そして城へ戻った彼女は彼を見つけると、直ぐに駆け寄った。誰もがその姿に驚き距離を取る中、セイレンは驚きながらも彼を見つめながら、覗き込むようにそっとシアへ手を伸ばした。
「少し、冷んやりとしていますね」
彼の手に触れたセイレンはそう囁くと、そのまま霧へ飛び込みシアを抱き締めた。その時彼女は笑みを零していた。それは微笑みのような温もりの感じられるものでは無く、美しくも脆い宝石の綻びが垣間見える微笑だった。それは何処の誰よりも彼の最も近い場所へ招かれ、此処へ招かれたのが唯一自分だけだという優越を感じたからだった。
「お散歩へ、出掛けましょう」