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それから数日後、シアがまたいつもの通り法院に出向くと、暗い室内に小さな明かりを灯した机に肘を着き、頬を手に寝かせながらヒスイが彼を待っていた。
「何だ、まだおったのか」
「そのような言い方だと、私以外であれば傷が付きますよ。今日は貴方に会いに、セイレン様が来られました」
「誰だそれは」
「はあ。この国の王女様です」
「晩餐は断ったはずだが。何用だ?」
「さあ。ただシア様は、と。お会いになられた際は、先程の私へのような振る舞いは、なさらぬようお気をつけ下さいまし」
手袋を身に着けながら、呆れるようにそう言い残してヒスイは帰って行った。また置いて行かれたような彼は、共に言い残された言葉を思い返した。
「全く、世話焼きな者だな」
そして彼は黒い上着を外し数冊の書物を手に取り、また夜へ潜っていった。その頃温かに灯る明かりを小さくしても、瞼を閉じて夜へ向かおうとも夢へはたどり着けず、この想いを聞いてもらおうと、セイレンは王へ会いに部屋を出た。
「お父様、法院へ赴く時だけでいいの。門限を遅らせて下さい」
「またそんな嘘を。次はどこの男へ会いに行くのだ」
「ひどいわ。違うの。本当に少しだけ夜中に、法院に居れる時間がほしいの」
「魔法も禄に使えないくせに、邪魔になるだけだ。やめておけ」
「そうじゃないわ!シア様に、会いたいの。それに、お父様やお母様よりは、魔法は心得ております」
辺りが冷やかになり、凍てつかせようとしながら彼女が言ったそれを聞いた王は、表情が変わった。
「シア殿に?ああ、そうなのか。それならば、許そう。遅くなり過ぎず、邪魔をしないようにしなさい」