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街から町へまた町へ、小さな集落にも立ち寄りながら、彼等は亡くなった二人の魔法使いの故郷を訪れていった。事情を話しシアの謝罪も、悲痛な声を掻き消す程に動揺が広がり、それには彼自身を非難する声が混ざっていた。
「シア様、大丈夫ですか」
「勿論だ。しかし気には留めている。あれ等が皆の声なのだ。それが聞こえる容姿で助かる」
「私は、納得出来ません」
「院へ戻ろう。事柄は済ませた。早々に試したい方法がある」
夜な夜な事情を説明して回り、彼等が帰路につき始めたその時、雪車を引いていた動物の大きな角が雪車に当たる音の後、それが急に方向を変えようとした。シアが外の様子を見渡すと、雪車程に大きな獣が襲いかかって来ていた。それに気づいた彼は、雪車を飛び出した。唸り声から声を上げ威嚇し向かって来るその獣に、シアはそれに向かって腕を振り下ろしいくつかの氷柱をぶつけると、次に腕を振り上げ氷つかせた。
「お怪我はありませんか!?」
ヒスイの声に反応せず白い毛に滲む獣の血を見て、「血、か」と彼は呟くと先程の町へ戻り、もう一台の大きな雪車を借りてその獣と共に、再び帰路についた。
「明日には、お戻りになるかしら。明日でなくとも、その次の朝までにはどうかしら。もう十日程になる、積もるばかりのこの思い。明日の夜はまだかしら。あの方が居る夜はまだかしら。このように澄みきって、
こんなにも綺麗に星が見える。今宵の夜空も、彼を真似ているのね。素敵な夜、とても素敵」
月夜に舞う蛍火の様に、セイレンは彼を想いながら部屋中を歩いて周り、そして彼女の夜は過ぎていった。