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「ヒスイ様、お久しぶりです。良かった、もうお身体は良いのですか?」
「ああ、セイレン様ありがとうございます。はい、このように書物に埋もれていても大丈夫。心配り感謝致します」
それぞれの夜がそれまでの夜に戻り始めたその夜、崩れた書物に埋もれながらも訪れたセイレンに挨拶をして、また数冊の書物を鞄に詰めると、ヒスイは帰って行った。その後、それまでのようなそれまでのように、セイレンに小さく手を振られながら、彼女に応えるように微笑みシアは部屋に閉じこもった。そして彼が部屋から出た後、夜を見る崖へ向かった。
「ヒスイ様、無事で安らぎましたね。神様が見守っていて下さったからかしら」
「違うぞ、それは違うぞセイ。ヒスイが努力をしたのだ。何を思い何を感じ、何をしたのかは分からない。分からないが、今彼女がああしているのは、彼女の力だ。神など居ない。あるのは生と死。あの宇宙と星。
そして今ここには、我とそなただけだ。誰の話でも無く、誰に知られる事のないここで、二人の二人だけの話をしよう」
彼を見つめセイレンは「はい」と頷き、シアに身を寄せた。それから数日後、纏めた書物を届けにシアはヒスイと城を訪れた。
「娘が邪魔をしていないだろうか。ヒスイ様も身体の調子を崩されていたと、耳にしたもので案じていたのだが」
「いいや、心を安らいで構わない。顔を見せてもらえるのが、我も心地よい」
「私の事まで申し訳ありません。このとおりもう大丈夫です」
「それならば良いのだが···」
「お二人とも!居らしてたのですね!」
彼等が話していると、奥の階段からセイレンが駆け降りてきて、シアに飛び付くように身を寄せた。その様子を見た白王は、安堵したような表情を見せ、そして後ろから見ていたヒスイも、伏せ目がちにも微笑み安堵した。