もう少し話すことあると思うけど、運命の人のことしか話していない
ピロリロピロリロリン♪(中段チェリーの音)と携帯が鳴った。
陽介「今日、久しぶりにてっちゃんに会ったよ」
修三「お、ついに運命の二人が出会ったか。どんなだったの」
「俺がコンビニに行ったら彼が立ち読みしてたよ」
「ほほう」
「相変わらずのカスだったよ。俺の金で一緒にパチンコ行こうとか言うからな」
「まともに会ったのが半年ぶりぐらいだったのに。。。真の友だね♪」
「何が?君おかしいんじゃない?」
「そこまで遠慮なくぶつかることができるなんて、真の友しかありえないよ。オラ嫉妬しちゃうな」
「あはは、カスが!」
「うりいいいい♪(カス吸血鬼)そして運命の二人は仲良くパチンコに行ったと」
「いや、行かないよ」
「何故!?幼少の頃から共に育った二人が久しぶりに出会ったのに、どうして、どうしてなの?(魔法少女)」
「カスめ。最近、君の方は何か変わったこととかないの?」
「無いな」
「出会いとかないの?」
「無いな、君こそどうなの、うまくいってんの?」
「たまにデートしてるよ」
「いいねえ。俺もいい人がいればいいんだがな。アスカとか、アスカとか、アスカとか」
「無理無理無理無理無理ィッ!(エリート吸血鬼様)」
「えへへ♪(魔法少女)デートってどこ行くの?ま、君が真に望むデートは、自宅でアニメ観賞だってこと俺知ってるけど」
「カスが!死ねばいいのに」
「えへへ♪(魔法少女)無理は良くない。自分の心に嘘をつくのはやめようぜ。さあ、心を解き放て!あの子は人間だぞ!(山の姫)」
「むきー!もうこの電話切ってもいいかな。オラ頭が痛くなってきた」
「あっはっは、大丈夫だよ!地球もいつか滅びるし」
「お前のターンはそこまでだ!クソ野郎!」
「ドロー!」
「ドローしない」
「じゃあもっとまともな話。山行こうぜ、山。来月2連休か、3連休取ろうよ、俺が合わせるから」
「ああ、たまには良いね。明日会社で予定聞いてみるよ」
「そして、下山後はバトルが始まるのです(楽器ユーフォニアム)。ひゃっほー!」
「ふっ、やはりカスだったな」
「ふん」
たまに思い出す。ずっと昔、愛した人のことを。歳月が経とうともすれ違った瞬間互いに気づいたし、それで楽しく話もできた。離れたら離れたで強く恋い焦がれた。あんな気持ちになることはもう無いかも知れないと思うと、寂しい気持ちになる。あの彼女も遠い土地で結婚して既に二児の母。今は迷惑にしかならないとわかるけど、でもやっぱり会いたいかな。相手の迷惑になるようなことはしたくないし、しないけど、自分の気持ちに嘘はつけない。もしもできたならもっと幸せになっている。多分美化されているその記憶が蘇るたび、淡く切なく、願ってしまう。どうか元気でいてほしい、どうか幸せでいてほしい、せめてあと一度会いたい、と。
願い、か。
願い。
結局のところ俺の願いはそれくらいしかないと知る。出会いと別れを繰り返した結果、それが残っていた。