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2



ずっとモヤモヤしながら、1日がすぎた。

その日の夜。



「いただきまーす!」


「まーす…」


「お、うまー!」





隣同士だからか、夕飯は毎日一緒に食べるようになった。


そのまま泊まったり、っていうのは

ほぼ気分で決まる。







柄になく、溜くんの好物づくし。


その量に、「なんかの記念日だっけ?」と

溜くんを若干焦らせてしまった。






「この餃子、おいしいね!」


「昨日、タネだけ作ってたから…」


「サラダもおいしい!」


「切っていれるだけだし…」


「からあげも!」


「朝、漬け込んでおいたから…」


「…和、どうかした?」




…!


そうだ、素直にならなきゃ…


そう思ったそばから、溜くんに対して

全然素直じゃない言葉を並べていたことに後悔した。




「た、たまには、溜くんの好きなモノ作ろうと思って…ほ、ほら最近和食に偏ってたし…」


「…別に和食も好きだよ?」


「で、でも溜くん、お肉とか好きでしょ?」


「まぁ…」


「いつも私に合わせてくれるし、

ひ、日頃の感謝っていうか、ね?」


「…どうしちゃったの、和らしくないよ。」





なんだよ、いつも感謝してないみたいな言い方じゃないかよ。



不満が顔に出ていたのか、

溜くんは慌てて訂正した。




「あ、あのね!俺が言いたかったのは、

本当の理由は違うよね?ってこと…。

本当はそういう理由で作ったわけじゃないでしょ?」























もう、なんでわかっちゃうんだろ。






「溜くん…」


「ん?」


「私、櫻ちゃんみないに素直じゃないし可愛くないし、好きなんて滅多に言わないし…

でも、溜くんのこと、大好きだから…

だから…嫌いにならないで?」






一度素直に吐き出してしまえば。


とめどなく、涙があふれた。






「…すっげー、殺し文句。」





ガタッと音を立てて、

座っている私を、頭から覆うように抱きしめた。






「素直じゃなくても、憎まれ口たたく和が大好きだよ。」


「溜くん…」


「小さい頃から、和のこと見てきたんだもん。

そのまんまの和が大好き。

和じゃなかったら、どんなに素直な可愛い子でも、

好きになってないもん。

その証拠に、櫻ちゃんのことはお友達以上に感じたことございません。」


「ほんと?」


「ほーんとっ」





ぎゅっと更に力をこめたから、

私もぎゅっと抱きしめ返す。





「でも、どうしてイキナリ不安になったの?」


「だって、山風さんどう櫻ちゃんがイチャイチャしてるの見て、いいなって言ってたから…」


「え、いつ?」


「昨日!」


「昨日……?あー!昨日!」





後ろでポツリと、

心の声、のように出た声。


私をずっと悩ませた、一言。







「違う違う!2人の後ろでテレビついてたじゃん?

ちょうど、飴のつかみ取りで42個取ったおじさんがいて、最高記録だったらしいの。

俺、前に行った時41個で、新記録ですよーって言われて景品で飴一袋もらったんだけど…」



飴のつかみ取り新記録の景品が飴…


随分と飴づくしだ。




「それで?」


「で、そのままテレビ見てたら、

そのおじさんは2袋貰ってたの!

羨ましくって!!」












…………は?















「だから、今日笹倉さんとこからの帰りがてらに行ってきたわけよ。」




仕事中だろアンタ。




「そしたら、43個!!

景品も3袋もらっちゃった〜」





ウキウキした表情でカバンから飴の袋を出す。






「ちょっと待って…じゃあ、いいなって…」


「景品2袋貰って、いいなぁって。」



待て待て待て待て待て待て




「私の悩んだ時間返せ!」


「えー、怒んないでよぉ、

素直な和も可愛くて、大好きだよ♬」


「うっさい。」





穴があったら入りたい、とはまさにこのことだ。






























「はい、径くん。コーヒー。」


「お、サンキュー。…うまっ!」


「ふふっ、径くんの好きな味は熟知してるもん。」


「さすが櫻。」





いつものごとく繰り広げられる、バカップル。





「わざわざ、事務所にこなくてもいいんじゃないですかね。

てか、仕事しろや、おっさん。

櫻ちゃんも、秘書室に行った行った。」


「か、和ちゃん怒ってる?」


「皺が増えんぞ。」




ピキッ




「ま、まぁまぁ。」




いつものように悪態をつく山風さん。


仲裁する櫻ちゃん。


アワフタしてるの沙耶ちゃん。





「和〜俺もコーヒー飲みたい。」





うるさい溜くん。






「ご自分でどうぞ。」


「人に淹れてもらったほうが、おいしく感じるじゃん!」


「だったら、喫茶店にでも、どうぞ。」


「和がいいー!」





今もなお、駄々をこね続ける。





家だったら淹れてましたよ!


でもね、あんまり溜くんを甘やかしてると


目の前のおっさんがニヤニヤでこっち見てくるもんですから。




















だから、もうちょっと我慢して。







fin


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