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「では、ここはこういう感じで。」
「あ、はい。山風の希望なので、そうしていただけると。」
「了解いたしました。」
館長さんも、気さくだし。
なんとか順調に進めそうだ。
「それにしても、羨ましいですな。」
「え?」
「こんなかわいらしい人が秘書だなんて。」
「そ、そんなことないです。」
これでもかと言うくらい、私を褒めまくる。
少し、こそばゆい。
「聞きましたよ、あのコンクール藤谷楓が裏で手を回してたって。」
どうして…?
あの話は、私たち以外知らないんじゃ…
「本当だったら、山風さんが最優秀賞だったとか。
いやぁ、とんだ災難でしたな。」
「…特別賞、をいただけましたし、
山風は賞とか気にしてませんから。
好きなことをして、自分が納得できる作品を作れればいいんです。
私たちも、同じですし。」
周りにウケるとか、売れるとか、
そんな風に考える径くんは、径くんじゃないから。
「そうですか。」
「はい。それに…噂っていうものは、本当かどうかはわかりませんから。」
別に、藤谷くんを庇ってるわけじゃない。
だけど、噂が広まって径くん自身が変な方向に注目されて欲しくないから。
「では、また来週もきます。
そのときは山風もくるので。」
「お、おぉ…そうですか。」
若干とまどっているが、知らぬふりをして
その場を後にした。
「ただいまー」
「おかえり!」
「あれ、何してるの?」
「今日作った服の試着です。
岩崎さんの体型に合わせたようで…」
「なるほど。岩崎くん、スタイルいいもんねぇ。」
「笹倉さんのとこに布がなくて、急遽長浜さんのとこに行ったんです。」
「あ、そうなんだ。」
「櫻ちゃんに会いたがってたよ。」
「私も会いたかったな〜いい人だったでしょ?」
「うん。この間、藤谷楓と2人っきりにしちゃったこと後悔してるみたいだったよ?
フォローはしといたけど。」
「うん、ありがとう。」
電話で先に帰ってしまったことを
謝ったけど、
そのときも藤谷くんのことには触れなかった…
気にしてただろうな。
近いうちに会わないと。
「そういや、コンクールでの藤谷楓の不正、
なんでか長浜さん知ってたみたいよ?」
「え?」
「なんでも、藤谷楓が最優秀賞とるなんて、
不正働かないとありえないって。」
そういえば、
長浜さん、藤谷くんのこと結構言ってたな。
「ま、わかる人にはわかるんだよ。
この個展、絶対成功するよ。」
「…うん。」
私たちは、ずっとそうやってきたもんね。