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「ふぅ・・・お風呂、ありがとう。」
なんだかんだで入ってしまった。
同じ石けんを使っているせいか、
体中から櫻のにおいがして・・・
って、変態か!!!
「ふふっ、径くん何百面相してるの?」
「へ?」
「さっきから、赤くなったり青くなったり、面白い顔してたよ?」
まさか、きもいこと考えてました。
なんていえず。
誤魔化した笑いを浮かべた。
「じゃあ、私もお風呂入ってくるね。
温かいお茶出しといたけど、
冷蔵庫に入ってるもの、適当にとってっていいからね。」
そう言い残して、風呂場へと向かってしまった。
・・・しかし。
ほんとでけぇ家だよな。
20畳以上はありそうなリビングに、対面式のキッチン。
すべての家具がいちいち大きくて。
でも、この大きくて広い家に櫻は月に何度か1人で過ごす。
それは、やっぱり両親が共働きで2人とも忙しいからで。
小さい頃からずっとそうだった櫻にとって、当たり前の日常かもしれないけど
やっぱり・・・
「寂しいよな。」
人ん家の冷蔵庫だし、躊躇したものの開いてみる。
一通り材料がそろってることを確認して、
勝手にフライパンを使わせてもらった。
ジュウッ
「・・・いいにおい、径くん、何してるの?」
「お、わり。勝手に使わせてもらった。」
「それは別にいいんだけど・・・フレンチトースト?」
「そ。うちの母ちゃん直伝、フレンチトースト。」
「わぁっ!おいしそう!!」
カウンターに腰を下ろして、きらきらした目でこちらを見る。
ぬれた髪に赤い頬。
また心臓の音が大きくなりそうだったので
フライパンに目を落とした。
皿にうつして、
はちみつ、粉砂糖、バニラアイスと3種類のフレンチトーストを並べた。
「どうぞ。」
「ありがとう!いただきます。
おいしい!!!初めて食べたよ、こんなの!
径くん天才!」
「・・・そんな大げさな」
「大げさなんかじゃないよ!天才、すごい、おいしい!」
「また作ってね」そう言われたけど、
あれ以来フレンチトーストを櫻に作る機会はなかった。
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「ってことがあって、フレンチトーストにしようかと。」
「いいじゃん!!絶対喜ぶよ、櫻ちゃん!」
「・・・うん」
だといいな。