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ソファの前までくると、それはすぐに見つかった。
肘掛の部分にポッキーと おきまりの紙。
ボッキーに書かれた文字は、"る"
"径くんも、私も大好きなココアを作るとき絶対に欠かせないもの"
また台所へ逆戻りし、ココアを作るときに必要なものを手当たり次第に探した。
シュガースティックの入ったケースの中に
キットカット。
文字は"い"
"径くんが、昔から好きだって言ってくれる
私の好きなもの。いくら騒がしくしても大丈夫だよね、(笑)"
騒がしくしても大丈夫。
といえば、防音室。
櫻のグランドピアノを置くために、防音室を作ったんだ。
隠す場所が無かったのか、
ピアノしかない、その部屋に椅子の上にチョコが置いてあった。
ウエハースチョコと書かれた袋には
"あ"と書かれている。
そして、紙。
"径くんが仕事忙しくて部屋に籠っちゃう時に、
どうしても寂しく感じちゃう時があるの。
そんな時はね、あるものを枕に被せて抱きしめて、またあるものを着るの。すると、径くんに抱きしめられたように感じるんだよね"
自分でも呆れちゃうほど集中して、何時間も経っていることなんて、ざらにある。
そんなとき、櫻のことをほっといちゃって。
寝室をのぞくと、涙のあとを残したまま眠る櫻にいつも胸を締め付けられていた。
それでも、我儘を言わない櫻に甘えてて。
そのときアイツがいつも身につけているのは、俺の服だった。
寝室のタンスを開ける。
「あ…」
帰ってきて、早く見たいとき思っていた顔。
「径くん。ハッピーバレンタイン。
今年はちょっと、めんどくさいことしてみ、たんだけど…」
引き寄せるようにして、抱きしめた。
「径、くん?」
「メッセージ、わかったよ。チョコの。」
「え⁉︎嘘。」
「すぐわかるよ…だって、5文字だもん。」
「…一応、法則があるのに…」
口をとんがらせながら拗ねる。
「可愛いだけだから、やめとけ。」
「かわいくないもん!」
これ以上言うと、機嫌を損ねそうなので、ここまでにしておく。
「ねね、径くん。今年のバレンタインはどうですか?」
「うん、めっちゃうれしい。
…それにーーー」
「俺も、愛してるよ」