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「うっわー嫌な女が来たね。」
「絶対私たちのこと、下に見てますよ!」
「確かに美人っちゃあ美人だけど、
下品なだけよ、あんなの!」
「ちょ、和ちゃん、聞こえちゃうから…」
「ふんっ」
プンスカと怒る、和ちゃんと沙耶ちゃん。
笹倉さんのところから帰ってきた溜くんは
頭の上にハテナマーク状態。
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てなわけで、今も事務所はピリピリ。
わかってないのは、男2人組み。
ってとこですね。
「なぁ、なんで怒ってるの?」
「別に…怒ってない、よ?」
「嘘だ。」
…そんなこと言われたって
なんて言えばいいの?
「ちょっと、山風さん。
取材、あの女の他に誰かいないわけ?」
「え、和も怒ってんの?」
「えぇ、えぇ、怒ってますとも。
超、嫌な女じゃん!」
「え?美琴さん、良い人じゃない?」
「はあ⁉︎もう、そんな仲なわけ?」
「そんな仲ってどんな仲。」
「あぁ、頭痛くなってきた。」
ズキズキと広がる胸の痛み。
「なぁ、櫻。
もしかして、お前もそれで怒ってんの?」
「…。」
無言を肯定と受け取った径くんは、
はぁ、とため息をつく。
…呆れちゃったかな。
めんどくさくなっちゃったのかな。
じわっと、涙が浮かぶ。
「あぁっ、泣くなって!
あのな、櫻。俺が好きなのは誰?
櫻だけなんだよ。」
「径くん…」
「櫻は俺が好き?」
こくこくと頭を縦にふる。
すると、径くんは嬉しそうに笑った。
「俺は櫻が好き。櫻も俺が好き。
それでいいじゃん?」
「うんっ…」
「それでも不安だったらさ、次からの取材
櫻も一緒にいてよ。」
「え⁉︎」
「やっぱさ、俺がここまで続けられたのは
櫻のおかげじゃん?
櫻がいないと、俺っていう人間は成り立たないわけ。
てことで、俺から離れるの禁止ね。」
にっこりと笑う。
カアッと顔が熱くなって。
溜くんがヒューって音を立てて
和ちゃんはヤレヤレと肩をすくめて
沙耶ちゃんはホッとしたように微笑んだ。