ヤキモチ
櫻side
「〜〜ってことで、また来週来ますね。」
「はい、今日も1日ご苦労様でした。」
「いえいえ、こちらこそ。
良い記事書かせてもらいますから!」
「ははっ、楽しみにしてます。」
アトリエから2人が出てくる。
…別に事務所で話したっていいのに。
径くんてば、あまりアトリエに人を入れたがらないくせに。
なによ、デレデレしちゃって。
鼻の下伸ばして。
バッカみたい。
心の中で毒づく。
こうなったのは、約一ヶ月前の話だ。
*******
「山風さん、美味しそうなの食べてますね。」
パキンッと割り箸を割った和ちゃんが
径くんの手元を見て言った。
「ほんとだー!櫻ちゃんの手作りでしょー?
いいなーいいなー。」
「櫻ちゃんは、あんたに作るほど暇じゃないです。」
「なんで和がそんなこと言うのさっ!
あ、わかった!やきもちでしょ!」
「はぁ?冗談は顔だけにしてください。」
「もう、恥ずかしがり屋さんなんだから!」
「お前の頭の中はお花畑かっ」
いつもの2人に、笑っていると
突然鳴った電話。
「はい、Sakuraです。
…はい、はい、少々お待ちください。
山風さん、なんか春名美琴さんっていう
雑誌記者からです。」
電話を取った和ちゃんが、
受話器を径くんに手渡した。
それから電話を変わった径くんは
嬉しそうな顔をして、メモを取り出した。
モヤッとしたものが、胸の中で広がる。
「はい、はい…それでは。」
「なんだってー?」
「取材させてほしいって。」
「お〜〜いかにも売れっ子だね〜
やっぱ、個展大成功が響いてるんじゃない?」
「だな。」
「これがきっかけになって、大波に、のれたらいいんだけど。」
「それで…いつなの?取材。」
「おぉ、来週のどれか時間あるときに連絡くださいだって。
櫻から折り返し電話頼んでもい?
時間あるときならいつでもいいから。」
「うん、わかった…」
正体不明なモヤモヤを抱きつつ、
スケジュール表を開いた。