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「気をつけー、ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
練習がおわって、汗を拭う。
マネージャーたちは、まだ動いていた。
今日こそ一緒に帰る約束を…
そう、思ってた。
「櫻!」
「あ、径くーんっ!」
美術室の窓から見える、人影。
それは、うちのクラスの山風。
明かる髪の毛に、校則違反しまくりの制服。
左耳にはピアス。
なんで、工藤なんかと。
「もう、終わったんか?」
「うん!後片付けしたら帰れるよ!」
「んじゃ、俺も下降りるわ。」
何が何だかわからない。
ただ、呆然とその場に立ち尽くしていた。
「すみません、お先に失礼します。」
そう言っていなくなった工藤は
山風と肩を並べて歩いていた。
「あれ、塚本くん?」
声をかけてきたのは、
先輩マネージャーの草壁さん。
「あー、櫻ちゃん。」
うんうん、とニヤリとしながらうなづいた。
「山風くんね、あんな怖い身なりなのに
櫻ちゃんのこと、毎回待ってるピュアな子よね。」
「え、山風が⁉︎」
「中学校から一緒みたいで家も近いんだって。
この間一緒に映画行って、お揃いのキーホルダー買ったんですって、嬉しそうに話してたわよ?」
ま、御愁傷様。
と肩をポンと叩いて、いなくなった。
「…まじかよぉ」
後日、いつものように寝そべっている
山風のカバンには、男にしては可愛らしいキーホルダーがつけてあった。
fin