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「く、工藤!」
「塚本くん?どうしたの?なんかあった?」
心配そうに、足速にやってきた。
「あ、いや…」
大したことじゃないんだけど、
と前置きしようとしたとき、工藤の後ろから
陽気な声がした。
「櫻ちゃん、どしたのー⁇」
「あ、岩崎くん。」
岩崎溜。
1年にしてバスケ部のレギュラー。
初日の体育の授業では、
ダンクシュートをキメたものの、
ゴールを壊した強者だ。
底抜けに明るくて、なにかと注目を浴びてる男。
「櫻ちゃん、今日部活ある⁇」
「ううん、今日はない…よね?塚本くん。」
「あ、あぁ。」
ないから映画に誘おうと…
「うん、ないよ。
「あ、じゃあさ、いつものメンバーで映画見に行かない⁇ほら、櫻ちゃん見たいのあったじゃん?」
それって…とちけっとを見ると、
案の定工藤が見たい映画。
「でも、径くん行くかなぁ?」
「行く行く!だって櫻ちゃんいるんだし!」
径くん、という人物が気になりながらも
間には入っていけなかった。
「バリバリの恋愛ものだよ?」
「だっじょーぶだっじょーぶ!
山ちゃんはなんでも受け入れるから!」
「まぁ、気にしなさそうだけど…」
「寝そうだって?」
「うん。」
はにかむ。
…なんだ、なんだこれ。
こんな工藤、見たことない。
「あ、そうだ塚本くん。何の用だったの?」
「え?いや、その…なんでも!」
今の俺には、そう言うしか、他なかった。