~ 間奏曲<アントラクト> “貴方様の翼に” ~
――それは、秘められた想い。
――コード16。
とうとう、このキーポイントへと、アクセスしましたのね。
ええ、わたくしは、すべてを知っておりますわ。
アカシャの図書館のレコードを、管理するわたくしには、
凡で俗な知識から、崇高なる真理まで、
手を取るように、把握できますの。
でも、唯音様だって、おわかりでしょう?
知識とは、破滅に至る毒だと。
知恵の実を食べたら最後、
いくら悔やもうと、嘆こうと、やり直しはきかない。
貴方様には、すべてを投げ捨てでも、
夏芽様を守りきる覚悟がありますの?
1ミリも後悔しないと、言い切れますの?
――そうですか。
ならば、わたくしは、再び貴方様の<翼>となりましょう。
ただし、片道しか保障しません。
わたくしにできるのは、お手伝いのみ。
そこからは、貴方がた人間の領域ですの。
完璧に焦がれ、願いを叶えんと、羽ばたいてゆく――。
たとえ、太陽に身を焦がして、
その愚かさゆえ、悪魔の差し出したる手を、取ろうとも……。
乞い願い、恋願い……希い。
不完全ゆえに、永遠なる旅路を行く、
<エヴェレットの申し子>。
ですが、貴方様は、そのひとりでしかありませんの。
どうか無理をなさらず……ご無事でお帰りくださいませ――。
(わたくしは祈っておりますの、
あなたが普通のしあわせを手にすることを――)
(( 運命の女神よ、どうか、少しでいいのです ))
(( この子に太陽を――。))
((夏の日差しを、愛の種床を、柔らかな掌を、どうか…… ))