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癒し少女と和ませじいさん

 自己紹介も中盤……

 ジャンヌはネットと現実のギャップに驚かされ続ける。

 特に、<ぱくりまく朗>はカワイイ女の子だった。


 <ぱくりまく朗>は、妙なヤツだ。


 いつも私のブログに、短いコメントを多く残してきた。

 大体は意味不明だ。最初に来た時のコメントはは「うげーうげー」って書いてあっただけだったし、「バナナ」とか「おっ〇いプリン」とか下品なものも多い。その上、急に「死ぬ」だとか「死ね」だとか「首吊りたい」とか「手首切っちゃった」とかダークな発言まで混ぜ込んでくる。繊細な心を持つ人間だったら、こんなコメントを残されたら気分を害するだろう。しかし、私はジャンヌダルクだ。何事にも気丈に誠心誠意でコメントを返す主義だから、もちろん、まく朗のコメントにも全て返事をしてきた。しかし、そんな私の誠意に対しての反応は全く無く、文体も変わらずに書き込んできたので、てっきりイタズラ半分で、私のブログにちょっかいを出してるのではと私は勘繰っていたのだ。だから、ここにまく朗が来たのは、実に意外だった。しかも更に、あんな困った事を言いそうもない純朴な感じの女の子と来たものだ。少なくともここにわざわざ来る以上、私に対して何か感情的なものがあるには違いない。

 

 結局その後も「予想外です」の連発で自己紹介は終わった。私にネットと現実の大きな差異を知らしめるには十分な内容だった。そして、食事の時間となったが、まだメンバーが打ち解ける様子はまだ無かった。私も黙々と、お刺身のつまを醤油に浸けて食べる。そんな微妙なムードを打破したのは、急に席を立って武勇伝を語りだしたハンドルネーム<FOX>の老人だ。


 彼は、食べている皆の前で、笠松競馬で万馬券を当てた事やオイルショックの時にスーパーのトイレで起こった事件、地元球団の低迷期の話など、長い年月で経験したどうでもいい体験を次々に話したわけだが、これが実に面白い。どうでもいい内容なのに、周りから笑い声が漏れる程にやみつきになる面白さなのだ。語り口は軽快、表情も活き活きとしている上に語彙も豊富ときていて、この老人はかの夏目先生の生まれ変わり或いは亀有からの使者ではなかろうかと私は思った。これほど周りに聞かせる事が出来る力はかつて多くの兵に神言を説いた自分ですら感心するに至る。これなら落語家の真打やら司会者やら何やらにでもなれそうなものなのだが、話の内容上どうやらごく普通の人生を送って来たとなると、まったく才能の無駄遣いである。この武勇伝は、皆が食事を一段落するまで続いたが、これのおかげでオフ会はとても和やかになった。更にジルの後押しもあって、みんな徐々に話し始めるようになり、とても良い雰囲気になってきた。


 私の近くにも、どんどんメンバーがやってきた。

 そして、皆コップにジュースをどんどん注いでくれ、それを私はどんどん飲んだため、結果トイレに行きたくなった。炭酸飲料も多く飲んだのでお腹も張ってちょっと苦しい。私とした事が、ちょっと不甲斐ない状態を晒してしまったが、人間と言うものは排出する生き物なのだから仕方あるまい。


 トイレに行こうと部屋を出る。

 がやがやと楽しげな声が障子の隙間から漏れ聞こえた。


 それを背に廊下を歩いていると、付いてくる足音がある。

 振り返るとそれは、<ぱくりまく朗>、略してまく朗だった。


  

 

 






 


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