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ジル=ド=レイ

 オフ会会場に辿り着いたジャンヌ。

 先に来ていた1人の男性に近づく……

 「こんにちは! あなたは、もしや……」


 「えっと、ああ……私が、ジャンヌ=ダルクだ」


 即座に気付くとは、さすが私も美処女或いは美少女だ。

 まだ転生前の威厳も残っているのなら少なからず喜ばしい。しかし、そんな気持ちは表に出す事はしない。まずは、この男の素性を知らねばならない。


 「君がジル=ド=レイか?」


 「はい。お久しゅう、ジャンヌ様。昔と変わらずお美しいですな。」


 変わらない事は無いと思う。いや、容姿は前世よりも上だと思う。

 それはさておき、この男の容姿だが……まあ、わかり易く言うと、相方が女子ボクシングを始めた、多人数アイドルグループ大好きの、ナレーションもよくやるメガネの太ましいお笑い芸人にそっくりである。この男が本当にあのジルであるのならば、正直なところ転生に失敗したと言っていいだろう。しかし、本人の前でそんな事を言うのは失礼だから言うまい。それに、私は、顔で人を差別したりするほど器量の小さい人間では無い。平等に向き合うのが主義だ。冷静に肝心なところを確かめよう。


 「まだ、君の事を信じたわけでは無い。君があのジルであるのならば、この問いに答えよ。本当にそうなら、きっと答えられるはずだ」


 「はい、仰せのままに」


 彼は騎士の様なポーズをとったが、まったく似合わない。

 そもそも、何故にこんなキノコみたいな髪型にしているのだろう? 似合っていると思っているのか、それとも大きい顔を小さく見せるためか? オルレアンにも似たような髪型の男はいたがあれはある程度流行していたからだ……色々と頭の中で詮索してしまうが勿論聞く事は無い。今はこの言葉を発して正否を確かめるのみだ。


 「では、聞こう。ラバテラの花の香りは……?」


 「我らの神鳴を神明を呼びさまし、栄華の道を切り開く」


 男は、迷いなく答えた。

 かつて、戦の時にほんの一部で使っていた呼応式暗号を彼は正確に答えたのだ。


 「……なるほど。どうやら、嘘ではなさそうだな。ジル」


 「おわかりいただけたようで安心しました」


 私達は手を取り合う。

 はためからみたらコスプレ美少女と、お笑い芸人が語り合っている妙な光景なのだろうが、幸いまだ誰も来ていない。


 「よもや、あなたが転生されているとは思いませんでした。再び会う事が出来て光栄にございます」


 「お互い、変わったな。ジル」


 ジルは本当に大きく変わった。まさに月とスッポン、ヴィーナスと紫式部だ。

 昔は、なかなかヒゲの似合う男だった。今はやけに肌がツルツルテカテカしている。ニヒルな雰囲気は変わらないが、見た目と完全にミスマッチであり、動きや言動が全てショートコントのネタのように見えてしまうのが複雑である。ただ、勿論、それを笑ったりはない。そもそも、私はお笑い番組等でウケることはほとんどない芸人泣かせな人間なのだ。ちゃんとジルと分かった以上、昔の様に接する。


 「君は、どうやって転生したのだ? もしや、錬金術か?」


 「おお、お詳しいようですな。ジャンヌ様」


 「まあな。伊達にひきこもっていたわけではない」


 「おお、流石は。そうです、私は錬金術によってこの世に転生いたしました。方法を言いますと長くなるので今は伏せておきますが……危険な賭けではありましたが、何とか成功したのですよ。ジャンヌ様は、一体どのような方法で?」


 「わからぬよ。気がつけばこの体だったのだ。おそらくは、大いなる神によるものだと思うのだが……何も聞こえないのだ。あの頃聞こえた天の声が聞こえない。だから、今となってはただ、昔聞いた神の言葉を語ることしかできんよ。」


 「むう……なるほど。やはり、そうですか。」


 「なんだ? 君は、何か知っているのか?」


 「ええ、あなたとコンタクトをとったのはそこにもあるのですから」


 「話してくれ。一体君は、私に……」


 「ああ、この話は会の後にしましょう。他の人が来ましたよ」


 そう言われて私は背を向ける。

 いくつかの軋む足音が聞こえてきた。










 






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