驚きの言葉<最終話>
オフ会は大盛況のうちに終了した。
皆は帰り、ジャンヌとジル=ド=レイだけが残った。
皆がいなくなって、がらんとした部屋に私とジルは戻った。
祭りの音が夢のようとはこのような事を言うのだろう。部屋の電機はまるでさっきまでとは違うように、静かに私を照らす。黒い夜の闇も、それに寄り添うように窓の外に鎮座している。
「どうでしたか、ジャンヌ様。今日のオフ会は?」
「実に、大きな驚きの連続だった。予想できない事ばかりだったよ。君も、他の皆も、ブログでは見られないものをたくさん見る事が出来た。楽しかったよ……」
「それはよかった。私も、頑張った甲斐がありました」
頑張ったというだけではあるまい。こんな会の賞品にハワイ旅行を出すなんて、ただ頑張っても出来る事じゃない気がする。しかし、彼の素性を今聞くのはやめておこう。聞く事は他にある。
私は、部屋の掛け軸をじっと見つめた。そこには「奇想天外」と、上手いのか上手くないのかわからない字で書いてあった。
「まさに、この字の如くだよ。人間は、私の予想を遥かに超越する生き物なのかもしれないな。」
「ええ、そうですね。だからこそ、あなたにはやってもらわなくてはならないことがある。」
「やっと、本題か。皆に言わぬとは、よほどの事情なのだな?」
「まあ、言ったとしても信じないとは思いますがね」
その時、ジルのメガネがキラリと光った……気がした。
「まさか、私にかつてのように人々を導く神的存在になれとでも言うつもりではないだろうな? 残念だが、今の私にはそれほどの力は無いぞ。宗教なども作るつもりは無いからな」
「あながち間違ってもおりませんが……さて、ジャンヌ様、<神隠し>と言う言葉をご存知でしょうか?」
「ああ、あの人間が急に失踪する現象の事だろう? 小説やラノベのネタでよくある話だ。大抵は妖怪などの仕業とか言うものの、結局は何かの事件に巻き込まれている事がほとんどだ。」
「そのおりです、流石はジャンヌ様」
「……ジル、もしや、それが本当にあるとでも言いたいのか? 神隠しが本当にあると? まあ、私もこうして転生と言うものを経験した身だ。信じられない話と言うわけでもないが」
「ええ」ジルは不敵っぽく笑ったが、芸人顔なのでちょっとギャグに見える。
「ただし、隠されたのは人間ではありません」
「では、何だと言うのだ? 」
「隠されたのは……神です! 神隠しにあったのは、神そのものなのです!」
「なんだと!?」
私は驚きのあまり一歩後退した。
畳のミシリと言う音がやけに大きく聞こえた。
神が、隠された。
それは、散々驚き続けてきた私に更なる驚きを与えるものだった。
<END>
何とか休まずに書き終える事が出来ました!
続きと語りきれなかった部分はまたどこかで書きたいと思います~
※2011年最後の投稿になります