会は終わる
ビンゴ大会も終わり、会はいよいよ終盤へ差し掛かる。
「それではみなさん、まことに名残惜しいでしょうが、残念ながらお時間が参りました!」
私がFOX老人の語る「呪いのネクタイ」の話を聞いていた途中で、ジルが声を張り上げた。聞いたとたんに、皆は自分の席にぞろぞろと戻っていく。おかげで、せっかくいいところまで来ていたおじいさんの昔話は中断してしまい、肝心なところを聞き逃してしまった。実に、残念だ。
「本日はまことにありがとうございました!私も、ここにいるジャンヌさんも今回皆様に会えた事をまことに感謝しております。本当に有意義な時間でした。今回出来たご縁を、今後も大切にしていきたいと切に思います! 次にまたこのような会が出来る事があれば、是非ともご参加くださいませ! 再び皆さんと会える事を楽しみにしております! では、最後に……皆さんにお土産を用意いたしましたので、お帰りの際にお受け取りください。」
最後はジルが全部まとめてくれた。
私が言っても良かったが、大体私の言いたい事を伝えてくれたので十分だろう。
今日は、本当に来て良かったと思う。
ぞろぞろと旅館を出て行くメンバーを、私は店の入り口で見送った。
何だか名残惜しい。こんなに人間と別れるのが名残惜しい事は今まで無かった。
もっと、ゲームの話とかアニメの話とか、呪いのネクタイの……ああ、しまった、FOXに続きを聞かぬまま普通に見送りってしまった。
「ジャンヌさん、今日はありがとうございました!」
「ああ、こちらこそ」
まく朗は、ぶりぶり君の人形を抱きしめていた。おいおい、まさかそのまま大須を歩くつもりではあるまいな? と、言いたく放ったが伏せておいた。なぜなら、案外違和感が無かったからである。
「また、会えると良いですね。私、家が坂祝なんで、ここならぷーっとすぐに来れますし」
「そうだな、住所とかは教えられないが、縁があればまた会えるだろう」
わかったようなフリをしたが、実はサカホギと言う場所がどこにあるのかしらない。
まあ、この東海地方のどこかにあるのだろう。
「それじゃ! さよおならっ!」
まく朗は無邪気に手を振って去って行った。
私も、手を振る。祭りの後の様な染みわたるような寂しさが、夜風と共に体に染みる。
これが最後の別れというわけではない。また会える。
しかし、やはりいつかは会えなくなる。人間は出会いと別れを繰り返す生き物だから。
「お疲れさまでした、ジャンヌ様。皆も帰られた事ですし、ひとまず中に入りましょう」
「……ああ」
「ジャンヌ様?」
私は、大須の隙間に見える夜空に向けて、ひとつ、細く長い息を吐いた。