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暗闇のトンネルから異世界へ  作者: 犬のしっぽ
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知らない誰かを知らない誰かに命じて殺すのは楽しい訳は無い・・

元の世界には帰れないと知った、俺は何を目標を生きて行けば良いのだろうか。



井戸にさえ滑車の技術もポンプの技術も無い世界、魔法で事足りて居るとしても余りにも遅れすぎて居ると思う毎日だ。


食事の前に手を洗うと言うより、石鹸さえもない、母の顔を見ながら問うと。



「作り方を知らなかったから、でも今は色々な物の作り方を知っているわ、それをこの世界に広めたいのよね」



「ならば事業として立ち上げてくれ、人員はナミバのかぁちゃんに頼むさ」



「ナミバかぁちゃん、ジュケットの嫁さんに下宿を引き継がせて人材派遣業のギルドを立ち上げてくれ、事業費はこちらで用意する、余裕が出来たら資金を返してくれらいい」



「ジュケットの嫁って誰よ、わたし知らないわ、初めて聞いたわよ」



「んげっ、ジュケットの奴未だ紹介して居無かったのかよ。俺の前では結婚するんだと言って鼻の下デレ~ンとしていたのにな」



「それは後で問い詰めるわ、それより人員派遣業って何をすれば良いのですか」



「手に技術が有るが一日は働けないけど半日とかなら働ける、技術が無いから中々働き場所が無い人とかを集めてね、それでも良いと言う条件の仕事を探して人を派遣する事業だよ。雇いたいと言う事業主やギルドも仕事を登録してもらっていいしね」



「リューキ、それってハローワークよね」



「かあさんそのままだよ、ここには専門のギルドは有るけど、なんでも遣りますしますのギルドは無いからね、派遣された先でスキルを身につければ派遣された人の為にも成るし」



「仕事の内容は何でもと言う事でしょうか」



「当たり前に泥棒とか夜盗の奴らに人員派遣は駄目だけど、草むしりや子守りとかからギルドの手伝いなんかからあらゆるきつい汚ない危険かもの仕事まで受けるのさ。だけど魔物とかと戦いは無しさ、それをさせては傭兵ギルドや冒険者ギルドから文句がくるだろうしね、色々と狭間の仕事を拾い上げて人を派遣するのだよ」



「あっ、そうだ。かあさんに頼みがあるんだ、最近子供の難民が入り込んでいるんだよね。放って置くと新しい犯罪が生まれかねないからさ、昔のよしみを通じて孤児院と養育施設を建ててくれ、但し其処には宗教関係者は入れない様にね、新しい施設が出来るまでは空いた兵舎を使えば良いよ」



「わたしの昔のよしみと言うのは有る程度教育のある人をと言う事ね、宗教関係者を入れないと言うのは何故かしら」



「そうだよ、飯を食わせて置くだけなら家畜と変わらないからな。有る程度教育を身に付けさせれば仕事を得られやすいだろうし、仕事に付けさせる時の身元の保証はかあさんか俺がなればよいさ。宗教の方はさ、絶対神が一つだけの世界に居ると思ったら色々と有ったんだよね。だから宗教は大人になってから自分で選べばよいよ、子供の頃から片寄った事を教えるなんて洗脳まがいなんだから」



美貴は「んっ」と思った、先にここに居た時も他にも宗教が有った等と知らなかった、あれも他にも有る等とは言って居無かったはず。それを聞こうにも今は聞く事が出来ない、今は只の馬として存在するだけなのだから。



「資金はこれを売った売り上げを当てよう、何時までも機密には出来ないからな、今は軍の将校以上には有料で持たせ始めているし。事務方にも主任以上には有料で持つよう命じて居るしな、それなりに金は入って来ている」



リューキは携帯を指さして言う、販売店の展開速度に中継基地の建設が間に合うかなと思った。



「各ギルドとか商人達に行き渡れば世界が変わるかな、各王国にも行き渡れば要らぬ紛争や戦争もある程度抑えられるだろう、まっ、良い事ばかりでは無いのは分かっているけどね」



「リューキ王子はこう言う物を作るのが得意ですね、何故なんですか」



「こう言う物を作る基本を教える学校と言う物が向こうに有ったんだよ、そこに通学して居たんだけどさ、ほんの端を知るだけでこちらに来たからな~。だからこれを作るのにも色々と苦労したよ、作れたから良しとしたいところだね。向こうでは、望みとしては工業系か理系の大学には行きたかったね」



「理由と理は差し置いて、来てしまったからね、何時までもそれをグチグチと言っても仕方が無いし。前向きに考えれば、それより早く平和で安定した国を作らないと、誰でも安心と安全を享受出来る様にしないと文化も芸術も技術も片寄って発展してゆく。そうなれば歪な世界に成りかねない、歪な世界には歪な精神しか育たないと思うよ」



そう語るリューキを、やはり只の人間では無いとこの場に居る者達は感じた。ミーキ王妃を見つめるまなざしも、改めてこの方を産んだという事実にその存在へ重さを感じるのだった。



お~い子分達、入ってこいよ、俺のおふくろを紹介するからさ。そんな風に突然隣の部屋に声を掛けたリューキ、ニヤニヤ笑うその顔は悪戯をこれから仕様と言う子供の顔だ。



犬耳はロング・ダッチート、猫耳はフルジン・ライバン、兎さ耳はガッチ・ペプトとリューキに代わってナミバがミーキに紹介した。



「俺がナミバのかぁちゃんちに下宿が決まってから知り有ったんだよ、夜の夜中にな」



「ほっほ~、それは初耳だな。どうやって知り有ったのか不思議に思って居たんだ、その上子分と呼ばれているんだからな、その切っ掛けを話してくれるかな」



レット総司令の問いかけに三人は青くなったり赤くなったりの上に冷や汗ダラダラの状態、まして王妃で親分の母を目の前にしてはなおさらで、今にも卒倒しそうな状態だ。


「お頭ぁ~、それは勘弁して下さいよぉ~」フルジンは今にも泣きそうな声だ。


「お前達のそんな情けない顔を見るのは久し振りだな、今は頑張って強く成っよ本当に。かあさんこの三人は俺の初めて持った部下だよ、初めて遭った時は笑える出会いだったけどな。三人とも孤児だそうだ、今日から身辺護衛として付けるから気を配って遣ってくれ」



「親分の護衛は誰がするんですか」


「ロング、それは直轄から引き上げるから大丈夫だ、俺の母はお前達の母だ、頭の一つも撫でてもらえよ」


「親方、俺は納得できないよ」


「今のお前達に、今はそれが必要な時なのだ。ガッチ、母を頼んだぞ」


「かあさんこの三人は見たとおりだ、未だ十四の子供だから俺の代わりに可愛がってやって欲しい、たった二つしか歳は離れて居無いけど、戦地に出す訳には行かないからな」



「俺は明日から前線に出る、現地の事を知らずに指揮を取るのには限界が有るからな。かあさんにはこの後を頼むよ、内政の相談にのってやって欲しい」



明日は早いからと言って部屋を出て行くリューキ、母と二人きりで話し合う事等何も無いと言う風だ。

美貴はそんなリューキを呼びとめたい気持ちを必死で抑えた、出て行くときの目が拒絶して居たからだが。レットはそれを見てため息を吐いた、責任を押し付けたのは我々だ、前線に出て行く王子の頭の中にはその責任感しかないのだろう。



レットの頭の中に「知らない誰かを守るため、知らない誰かを差し向けてその誰かを守れと命じる、そして必要ならば襲って来るかも知れないその知らない誰かと戦えとも命じる、命じた俺はどちらの生きるか死ぬかは知る必要に無い立場。命の重さを軽く感じてしまう立場でもあるよな、何時かそのしっぺ返しは来るだろう、その時は来た事に真正面から受けて怖じけず居たいものです」そう話すリューキ王子の顔を思い浮かべた。

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