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暗闇のトンネルから異世界へ  作者: 犬のしっぽ
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淡々とした親子

美貴は驚愕して居る、元の世界に居るならば只の一高校生の竜貴である。だが、今目の前に居る竜貴はその只の少年では無い。信じられないが、軍を率いる将の一人なのだ。幾ら自分に似て居て、且つ剣を持って居ただけでは有りえないだろう。まして異世界でこの短期間の内にである、王子を平隊士には出来ませんからとレットはすました顔で言うが。



「あの剣は盗まれた物なの、でも盗んだ人の孫が持ち出して貴方に持たせるなんて奇跡的な因縁ね。彼はもう死んじゃったけど、やはりその剣は持ち主を選んだとしか言えないわ」



「事故でも起こしたのかい」



「覚せい剤を使って居たらしいのよ、車を運転して居る最中に薬が切れたとかの話だったわよ。それにね、銃の実弾を大量にばら撒いて崖下の川に転落して居たのよ、その上貴方まで行方不明でしょ、もう大騒動よ。有る事無い事もう滅茶苦茶に書かれてね、人間不信になったわよ」



「ふ~ん、でも今はそんな事より色々とこちらも切迫した状態なんだよね。それよりさ、お土産って向こうから持ってきたのは本だけなの。スポーツ用品のカタログとかこっちでも使えそうな武器の本なんかも有ったはずだよ、戦闘地域が拡大して居るから役に立ちそうなの無かったかな」




目の前の母に、かあさん土産は何と碌に挨拶もしない息子に憤懣やるかたない美貴。散々心配させて何よと言えば、記憶を取り戻し今の状況も把握した竜貴は「俺に責任はないよ」そう一言で片付けてしまった。そう言われればそうなのだから怒るにも叱るにも言葉が続かない美貴でもあった。いま自分の周りに居るのは嘗て仕えてくれた人達もあるが、だからと言って竜貴の立場を考えれば余り叱る事や文句を並べたてるのも得策ではないだろう。自分の身に起きた事やここへ又来る事が出来た経緯等も、レットに聞かせて良い物かどうかの判断は難しい。



「土産はね、貴方の持って居た色々な本よ、中には危ない本も有ったけどね」



「危ない本なんてどう言う意味で危ないのさ、Hな本なんて持って居無かったはずだけど」



「そうなのよね、健全に育って居ると思ったけど外れでがっかりしたわ」



「少々不健全な母親だとは思って居たけど、そうあからさまに言われると一寸悔しいかな」



「貴方のそう言う所誰に似たのかしら、わたしに似たなんて嫌よ」



無言でビシッと自分を指さす竜貴にそう言いながら、人を指ささないのと文句を言う。



「嫌は無いでしょ、こうまで似た者親子なんて気持ちが悪いよ、早く俺の親父って言う人の所に行けば良いのにさ。なんでまた俺のところを目指したんだよ、会ってはいないけどあっちには兄貴も居るんだろ、顔を見に行く気はないのかよ」



竜貴もどうやらそう言う事から話の支点をずらしたいらしく、ただの親子の会話へ持ち込んで行きたい居様だ。




「貴方が異世界でどんなにか苦労して居るかと、とても気が気じゃ無かったから貴方を優先したのよ。なのに呑気な顔をしてそんな事を言うし、将軍様だなんて信じられないわ」



「ビーリュー王子がこちらに向かった情報が入っています、直ちに接触して王妃様の事を知らせる様に伝えてあります」



「飛行機も新幹線も車も無い世界、じれったいったらないよ、情報の入りは幾らかましには成って来たけどね。ああそうだ、かあさんにはこれの手配役をやってもらうよ、ナミバのかぁちゃんにはそう言っておくよ。あいさつ回りよろしくな、工場が出来たら責任者をやってもらうからね」



通信機器として作った携帯電話機を指さして竜貴は言う。



「なんて子なの、親のわたしをこき使う心算なのね」



「ただ飯食べさせる余裕なんてないからな、立っている物なら親なら尚更使うさ、ってか使わなきゃ損じゃんか」



「レットさん、貴方もこんな風に使われている訳じゃないでしょうね、まったくこんな風に育てた心算は無かったのに、どこを間違えたかしら」



「ミーキ王妃様、わたしの立場は総司令となっていますが。実質的な権限は総てリューキ王子様に有ります。敵方の拠点を奪い城塞化してこちらの守りの拠点としたり、未だ本格的でない向こうの再侵攻を止める作戦を立てたりするのもリューキ王子様の仕事です。もちろん本格的な防衛線を確立するために軍を編成して投入はしていますが、それでも未だ規模も兵の錬度も低すぎると叱られている所ですよ」




「あら、やはり名前の呼び方はわたし達の世界の様には行かないみたいね。まあ仕方がないわ、それならばリューキで統一しましょうね」



「それより呆れたわ、貴方どこでそんな事を覚えたの、まさかあの戦争ごっこで覚えただなんて言わないでしょうね」



「んー、基本は同じだからね、少ない戦力で敵の兵力を削ったり、少ない敵兵力には大規模に攻撃して根こそぎ削ったりは当たり前でしょ」




「まぁ、もうすぐ大規模な軍団で正面の国境閉鎖が出来るまでなりますよ、敵方の友好国と重なる所もあるのでそちらにも戦力を廻している所です。ただその友好国がこちらに兵力を向けると言う情報が入って居無いのが不思議です、奥地まで情報員を入れて居るのだけどね、中々尻尾を出さないのですよ」



「レットさんが言う様に、こちらは戦略的な見地から見れば、姑息な手段で凌いでは来たのだと言っているけど。向こうさんもどういう訳か、本格的な侵攻をこの十六年してこなかったんだって。貴族達の泥棒行為は拠点まで作って本気の度合いを見せてはしてきただけどさ、国としての遣る気が戦略や戦術を見ても無いと言うか、そこがどうしてなのかがあるんだよ」



「サカギニシトゥ王国の現在は、ミーキ王妃様が居無く成られてから王が変わり、王室と諸貴族との間に何度か戦がまいの事が有ったと聞いています。現在も暗闘は続いているらしく、国王陛下は現在も独身だと言う事です。建前としては病弱で結婚どころではないとの話が聞こえていますが、実際はどうなのでしょうか、我々の情報部も実際の事をつかめて居無い現状です」



「レットさん、それだけ向こうの王室から出る情報を遮断するシステムがしっかりして居ると言う事だよ。国王自身がその位の事を抑えるだけの力は保持できているか、あるいは宰相や側近がただ者達では無いと言う事です」



「難しい事は分からないわ、でも軍資金はどうして居るの。それだけ生産にたずさわらない人達が出て来ると財政も大変でしょう」



「その事なんですよ、レ・トンチって言う人を覚えているかな、今は長老会議議長をしている人なんだけどね」



「あ~、顔はハッキリと覚えては居無いけど、姓名を名付けたのはわたしよ」



「そのインパクトのある姓をどこかで聞いたよなあ~って悩んだ時も有ったんだよ、それで納得かな」



「彼が財政に携わって居ると言う事」



「こちらとしては独立独歩の体制に持って行きたいからね、色々とやりくりをお願いして居る所かな」



「貴方、まさか国王に成ろうと言うの」




「あはははっ、かあさん馬鹿馬鹿しい事を言わないでくれよ。向こうの世界でも庶民として育った俺がそんな真似が出来る物か。レットさんには言って有るけど、落ち着いたら俺は放浪の旅に出る心算さ。ここは大統領制の統帥権を敷いた議会民主政治制度でやって貰う心算だよ、まあ、しっかりと運営できるまでは幾つかの曲折は発生するだろうけどね。向こうの世界にだって色々ともめ事はあるんだし、こちらでも当然色々出てくるさ」




「部下たる我々には納得しがたい物が有りますが、国は王の私物ではない、国民の物だから国民が主となり責任を持って運営するのが当たり前だと言われまして」




「貴族やそれに準ずる特権階級を排除した体制を作らせたい、そんな体制に事が済んだ後は俺は邪魔者さ。俺は魔法がある世界を旅したい、今から楽しみなんだよね、ただ余り歳を取らない前に何とかはしたいと思って居るよ。この争いも向こうの国王とコンタクトがとれて話し合えれば一番良いのだけれどね、向こうの強行派を排除出来れば事は簡単に行く部分も有るんだからさ」




向こう見ずの子供と思って居た我が子が、異世界に来てから大人になり独立した一人として離れて行こうとしている。一抹の寂しさは有るが、生き生きとこれからを語るリューキを見て居て、ミーキはどこかホッとする自分が居る事に気付いた。ならば、幾許かの支えをしたいと思うのは親心であろう。



「しかしさ、かあさんも間が悪いよね、スイ伯爵も来ていたのに会えないなんて」



「そうですなぁ、泣いて悔しがるでしょうな。伯爵はもっと居たかったらしいのですが、リューキ王子様から陛下に親書を渡して欲しいと頼まれては断れなかったでしょうな」



「え~、レットさん、それって俺が悪者見たいじゃないですか」



「まぁねぇ、四六時中王子様王子様の一辺倒でしたから鬱陶しい事極まりって言う所でしょうか」



「彼女らしいと言えば言えるかしら、でもそれは未だ遠慮の感情が有るわね、愛情が溢れすぎると暴力的な方に走りやすい性格なのよ」



「そんな愛情表現が有ってたまるか」



「鍛えると言う意味も有るのよ、伯爵家は武で鳴らした家系だそうだから」



「兄もスイ伯爵に鍛えられた方なのかな、其れだったら一戦を交えた会話も有りだ、邪魔にならない前線で会おうかな」



「敵方が脅える位派手にやりなさい、リューキにも魔力は半端で無い位は有る様だから抑止力位には成るでしょうよ、あの子も多分負けない位は有る筈よ」



「まあそれは会って話してみないとね、その時はかあさんも居無いと駄目だよ、十六年ぶりなんだろうからさ、色々と感情も昂るだろうしね」

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