表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗闇のトンネルから異世界へ  作者: 犬のしっぽ
41/45

母、美貴が来た   その一

美貴は始祖の神より竜貴の居る場所を教えられ、さらに行きたい場所を思い浮かべればそなたはそこに居る、そう言われてポンケト地区に有る崩れた神殿傍の古い街道を思い浮かべた。

激怒した始祖の神から贈られた、二つの世界の元神様だった馬二頭の内の一頭に乗った美貴は。思い浮かべた街道を、呑気な顔をして教えられた場所へと向かっていた。



美貴にとってここは国王と結婚する前から統治を許された自分の領地だった所だ、蛮族魔族魔物の住処と言われていた場所だったが来て見たら大ウソだった。確かに魔物はいたのだが、魔人等居る筈も無かった。住んでいたのは虐待に耐えかねて死に物狂いで逃げて来た元奴隷たちや、亜人と呼ばれて差別と区別をされて苛めつくされた者達ばかりだったのだ。当然来た頃は彼らの警戒心から中々受け入れてもらえず、当たり前に毎日が辛い日々でも有った。




しかし元々農村で育った美貴、魔法の力を使いながら自らの手で農地を切り開き、孤児たちに農業や牧畜と蚕を育てる事を教えた。特に美貴が蚕を見付けた時には、狂喜して周りの人に心配をさせた物だ。

そんな美貴の日々の暮らしを見て居た住民たちは、姫様と慕い信頼をする様に成って来ていた。奴隷解放の為自ら魔法を使い奴隷商人と戦い、連れ去られた住民を助けるために敵地に乗りこみ連れ帰ると言う戦いもしていたからだが。




それを聞き付けた、現国王のヴェインに王都へ拉致されそうになった事もあった。それよりも警備の手薄なこの地域では、奴隷商人が跳梁跋扈する事でも有名であった。事実、奴隷狩りの妨害をする美貴自身も狩りの対象にされた。だが逆に彼ら奴隷商人は自分達が思う以上に強力な魔法を使う美貴に捕らえられ、元奴隷で有った住民に渡された。奴隷がどの様に辛く苦しくみじめで有るかを身を持って体験させられた奴隷商人は、それでも許されず極刑に付された。有る意味究極の結末と言えるだろう、それが正しいか正しく無いかの事では無く、虐げた者への報復をしなければと言う感情を押さえきれなかった住民たちの意思でもあった。




そしてそんな最中、養蚕に成功し、機織りをも普及させるのに四年、同時に高級織物が作られる様に成り名産地と有名にもなった。だがそんな最中に一度、王子のヴェインに美貴はそれらを放棄させられると言う暴挙の目に合って居る。規模の大きい事業を展開する為、王に資金の提供を求めに王城に来たのだが。それが突然王子との結婚をと命じられた、命令すれば王の前では逆らえぬだろうと言う。そんな馬鹿な王子に激怒した美貴は、王城を八割方魔法で破壊し抵抗。だが美貴はさらに抵抗をしていた、あんな馬鹿王子と結婚する位なら王都を破壊し自害しますと宣言したのだ。馬鹿王子ヴェインは、それなら俺も一緒に死ぬと言いだしてさらに美貴を呆れられさせる。




当時王子だったヴェインは、年に一度地竜に乗って美貴に会いに来ていた。年々愛らしさへ美しくも加わって行く美貴に逆上せ上ったヴェインは、愛ゆえにとは笑えぬ暴挙を厭わない行動に出て居た。王子としての責務など放棄して、美貴の傍にべったりと居付くのに困った美貴は、一つの謎かけをしてそれが解けなければ会いもしなければ結婚も有りえないと言ったのだ。魔法で破壊した王城を魔法で元へ戻した美貴に、欲の塊の様な貴族達も恐怖して王子との結婚をさせない様手を尽くしてきた。




馬鹿と美貴は罵るが、ヴェインは単に美貴への想いに逆上せ上って居るだけ。それを除けば優秀な人物であり臣に信頼され愛されても居るのだ、美貴に対する行動も美貴の世界ではストーカー行為で迷惑な事なのだ。だが過ぎる愛の告白は一方的で有ればこそ、どこの世界で有ろうと迷惑事に違いは無い。家臣たちも呆れる行動、だがミーキお前しか見て居無かった、だからそれ以外の人の事等知らないとの究極の言葉を発した王子に。笑えぬ爆笑に苦しんだ家臣たちには、愛すべきお馬鹿さんと定着してしまった。恋は盲目とは言え、そこまで愛されていたのかと美貴がほだされたかは知らないが、少しだけ見る目が違って来たのを家臣たちは知り、何故かホッとするのだった。



長くは続かなかった幸せの時間も、ここに来て今一時の我慢と美貴は思って居る。




身勝手で気まぐれで馬鹿な神に翻弄された四人の親子、ようやく一つの世界に住めるようには成ったのだが、これからも問題は次から次へと起きては来るだろう。



だが長く待った時間、今目の前に有る建物の中に入れば息子に会える、それからもう一人の息子とも。夫とも会えるだろうけれど、何かとても気恥かしい心持の美貴でも有る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ