捕まえて絞り取りましょう・・お金をね
う~ん、彼らは戦争気分で無い様ですね。師団ごとの間が空き過ぎだよ、ピクニック気分なんでしょうかね。
歩兵師団の動きだけに注意してくれ、重騎兵を含んだ師団で無くて幸いだったな。
満足な情報を得られずに、のこのことやってきたサカギニシトゥ王国の混成軍は。歩兵師団を先頭に貴族私兵師団と後方支援混成師団と続いてくるが、あーもハッキリ境目が有るあの陣形はなんだよ。囲んで下さいと言って居る様なもんじねぇか、望み道理囲んで遣ろうじゃない。
「防護障壁最大展開、敵を囲む三つの輪となり柵となれ、柵は網に変わりて縮み行け」
「レット総司令、しばらくは動けませんから土系魔法師に堀を作らせて完全に孤立させてくれませんか。後方支援の連中は武装解除後、荷を没収し捕虜収容所を設置して収容して下さい。全員の履歴を厳しく調べてください、商人か工房関係の連中でしょうからね。のこのこ付いて来た報いはガッツリ受けて貰います。貴族同様絞り取りましょうかね、向こうの経済に痛手を与えましょよ」
圧倒的なリューキ王子の魔法に、侵入してきた敵は戦う暇も無く捕虜にされた。竜貴は貴族達を下着姿で拘束させた。他の敵そのままだが、貴族に対しては苛烈な尋問をしいた。当然抗議の声は上がったが、盗賊団を捕まえただけだ。貴族だと言う証拠はどこにもない、そう突っぱねた竜貴は。魔法封鎖の拘束具を付けた貴族達に、貴族と確認出来たら身代金はいくら取れるかなと聞くと全員沈黙した。
「リューキ王子、敵歩兵師団は師団長以下、全員の家族を貴族の連中に身柄拘束されているそうです」
「レット総司令、土系魔法師総員を使って出来るだけ深い堀を掘り彼らを完全に引き離してください」
「了解した」
「レガル副作戦司令、捕虜にした歩兵師団の武装解除は完了していますか」
「歩兵の防具も総て取り上げました、魔法師は魔法を使えない様拘束具を付けています」
「魔法師や魔術師の抵抗が少なかったのは何故なのかなぁ、それも尋問して下さいね。後は・・、まぁともかく戦利品は後で報告願います」
堀が完成する様だから貴族軍から味方を離せ、敵歩兵の捕虜には食料と水テントを渡せ。だが、貴族の連中にはテント意外渡すな、そう何もするな何もやるな。ん~、お貴族様の荷は豪華な物ばかりだろうな。よさげな食料は歩兵の捕虜に優遇して渡して、残りは後方支援部隊の捕虜に渡せばいい。武器防具等は足りていないこちらの部隊部署に廻してくれれば良いと思う。高級品は競りにかけて売ってしまえ、売り上げは捕虜の帰還費用にしてしまえばいい。貴族からは兵の家族の開放と身代金を取るぞ、それまで貴族達は生かさず殺さずで良い。貴族の従者を一人ずつ国境で解放する、交渉に家宰をミーキの町まで連れて来るよう書簡を渡してやるように。ここに居る軍は国境に移動展開してほしい、貴族の奪還に兵を動かしてくる可能性もあるからな。
「リューキ王子、捕虜の歩兵師団長が謁見を申し込んできましたがどうしますか」
「未だ早い、彼らは未だこれからの事を何も考えられない状況だろう。多分家族の事だろうが、今は俺達も何も出来ないのは分かって居る筈、もう少し落ち着いてからで良いだろう。だがレット総司令が話を聞く分には構わない、情報の一つを得ると思えば良いと思うぞ」
「レット総司令、友軍の残りは今どこに居ますか」
「元敵の拠点に居ますが、どうしてですか」
「国境付近の前線にいるのは確か十二万でしたね、今行く様に命じた部隊数も十二万。後ろの備えにもう十二万の重騎兵と騎兵を送れませんかね、どちらに敵が攻撃してきても良い様にですが。拠点にいる兵力はどの位ですか」
「後方に置く重騎兵と騎兵のほうは大丈夫送れます、拠点の兵力は総数て送った兵力と同じです」
「兵種は歩兵ですか」
「歩兵と弓兵にクロスボウ兵が中心です」
「それは不味いな、前線に後方支援の戦闘部隊が居ないのと同じだ」
「全部前線に送りますか」
「それが最善と思うよ、拠点防護の要員を残して後は全部ね。後でちまちまと兵を送るより幾らかましだ」
「その代り後方支援の補給隊を拠点に入れましょう、いくらか前線に近く成りますから物資補給には良いでしょうな」
「それで良いと思う、直ちに命令を出して欲しい。それとこれだけ多くなった軍だ、直接の指揮はレット総司令が前線に出て取ってほしい。俺は直轄軍を鍛えているから、動かせるようになったら俺も前線に出る」
「空に成ったこの地域はどうしますか」
「レ・トンチ議長に頼んで兵を送って貰ってくれ、それだけの兵は出来上がっているだろうからね」
「リューキ王子、私が聞いた話を聞いて欲しい。捕虜の師団長が言っていました、我々が捕虜に成った瞬間。我々の家族は総て殺されているだろう、我々は戦闘奴隷ですから本来は家族等もてないのですが。貴族達の方針で家族を持たされました、決して裏切らせない為にで。ですがこうやって捕虜になりました、私はもう歳ですから新たな家族を等と思いませんが。若い者達も居ます、未だ夢を終わらせたくは有ません。戦闘奴隷の我々の帰還は有りえません、ですからこの地で開放して頂ければ幸いです。そう言っていました」
「それが事実なら、俺はサカギニシトゥ王国を潰す、その前にこちら旗の下には奴隷はいないだろうな」
「有りえません、みなミーキ王妃の手助けでそれから逃げ出した子孫が大半ですからね」
「そうか、ならいいが、ツールガルラにも奴隷はいるのかな」
「ミーキ王妃様のご意向を無視する様な王では有りません、その心配は有りませんよ。それに先代王がツールガルラの奴隷は解放し、何人たりとも奴隷を持つ事を禁止しましたから。隠れて農場などで持っていた者も居ましたが、厳罰に処せられました。農場は奴隷の持ち物に、農場主だったものは身一つで家族ともども国から追放されました」
「そうか、この世界から奴隷解放もしないとな。自由を手にしたいなら戦うしかない、自由を手にしたら責任が有る。誰をも奴隷にしないと言う責任と、自由を守る責任がな。同じ地べたで暮らすのだ、誰かが誰かを虐げて良いと言う理はないからな」
「でっ、師団の幹部も全員奴隷なの」
「リューキ王子、信じがたいのですがその通りです」
「なんて言うこってすか、レット総司令、危うくこっちが殺されるか捕虜に成るところだったよ」
「リューキ王子、それは何故ですか」
「それを聞きますか、頭の先から足のつま先まで死にぐるものいで向かって来るんだよ。絶対死なない死なせない、の師団長以下の作戦行動や戦闘行為なんかまともに食らったらさ。こちらの軟弱兵なんてさ、ゴミみたいに蹴散らされるよ。捕虜のその師団長に言ってくれないかな、なんであんな馬鹿げた進軍の仕方をしたのかをね。大体は検討は付くけどさ、確認の為にだけど。でっ、その師団長ってどんな人物。奴隷の身分で師団長とかって、頭も良さそうだし統率力も有りそうだね」
「リューキ王子は知らないのは当然ですが、レサアマル王国とヤハフタル王国、サカギニシトゥ王国の間に挟まれた小王国が有ったのです。サカギニシトゥ王国の貴族団が、国王に無断で侵略し収奪したのです。挙句の果てに国王家族と一族と、貴族の大半を殺したのです。その時激しく騎士団は抵抗をしたものの、奇襲を受けて兵はほぼ全滅し。かろうじて残った彼らを捕らえ奴隷にしたのです、家族が居た者は家族を盾に、家族の居無い者には無理やり与えて家族となして盾にしたのです」
「会おうか、お互い良ければ俺の直轄部隊の副長に成ってもらう。悪くても俺の直轄部隊で働いてもらうさ、まぁ悪いだろうの言葉は無用だろうけどな。しかしサカギニシトゥ王国の国王って飾りかよ、良い様に自分とこの貴族に振りまわされて居るじゃん」
「病弱で王妃さえも迎えられないと聞き及んでいます、確か今年で三十六歳のはずです。あの国の国王は国是として死ぬまで退位出来ません、それに国王は執政を置くのを極端に嫌がって居るとか。誰も信じない、人嫌いとも噂されていますね」
「それを含めて戦略会議を開きましょうか、戦わずして勝つ方法もその辺りに有りそうだし。捕虜にした貴族連中は全体のほんの一部だろう、あの国にあらゆる手を尽くしてゆさぶりをかけ内部崩壊させるのも一手だしね」
「それではこの場はリューキ王子の直轄部隊を除き撤退させ、先の様に派遣します。それと、後ほどあの師団長をお連れします」
竜貴は三日後、この捕虜にした敵奴隷の歩兵師団長と会談をお持ち。親子以上の年齢差ながら、確かに真のおける人物とみて副団長の任に付くよう説得した。彼の元部下へは、望まない者を除き総てリューキ王子の直轄部隊に組み込む事を伝える。さらに三日後には、彼から副団長の任に付く事を承諾するとの返事が有った。部下達も、欠ける事無く直轄部隊に入る事を承諾した。
後方支援部隊に居た商人や、工房関係の人間は総て洗い出された。軍にしたがって来たのだから、侵略者の一人として死刑を含む厳罰を申しつけられるだろうと伝えれば。全財産を差し出しますから死刑だけはと懇願してきた、尻馬に乗って欲をかいた結果だった。
貴族の者達は、家宰に任せた。死ぬも生きるも彼ら次第、等とは言っていたが。その焦燥の加減には笑った、役にも立たぬ意地を張るも良いさと。総て家臣から引き離し、自分の事は自分でするよう命じたが。そんな事等出来る筈も無く、たった一週間で死者の様になって行った。リューキは死なれたら金が取れないぞ、等と笑いながら時間制限で世話を家臣たちにさせたが。家臣たちは愛想をつかせているのか、いい加減な世話の仕方をしかしない。あちらこちらから、悲嘆の声が聞こえて来るが。贅沢と人も無げな暮らしをしてきた彼らに取って、その報いの地獄はこれからだ。と竜貴が呟くのを聞いて、さすがの直轄部隊の幹部達も震えあがった。