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暗闇のトンネルから異世界へ  作者: 犬のしっぽ
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スイの想い     その三

スイの目の前に、懐かしく愛おしい我が主様。


我を忘れて飛び付いたのだが、気が付いたら水の中、上にはしっかり蓋が・・?。

ミーキ王妃様ぁ~の声と同時に、飛び付いて来た中年女性を。竜貴は水の中に転移させ、上から物理防御のプロテスで蓋をした。知らないおばさんが飛び付いて来たので、とっさの行動なのだが。リューキ王子、彼女は総司令のお客様です殺しては不味いです。護衛らしい二人に声を掛けられて、なんだそうなのと水中からスイをだし、風の魔法、火の魔法で水の中に転移させる前の状態に戻した。




スイは一連の事に自分の不埒を棚に上げ、ミーキ王妃とは似ても似つかぬ彼の行動に激怒した。




「なんて事なの、女性をいきなり水の中に放り込むなんて無礼にも程が有ります。一体どういう教育を受けていたのですか、親の顔を見たいですわ」




「ふ~ん、頼みもしないのに自分から抱きついて来たのに。厚かましい物言いのおばさんだね、頭のネジ十本位外れているんじゃない。親の顔を見たいだって、俺の方もおばさんの育てた子供の顔を見たいね。きっと暴れる事でしか自分の意思を伝えられない凶犬みたいな奴だろうな、そんな奴が目の前に出てきたら問答無用に首をはねてやる」




スイは絶句した、確かに自分から飛び付いたのだ、非礼は自らにある、挙句になんと言う事を言ったのだろうか。護衛の二人が執り成してくれなかったら、わたしは確実に死んでいたかも知れない。この少年は苛烈に物事を一瞬で判断し、実行する事が出来る人物なのだと認識したのだった。スイは地面に両膝をつき、両手を胸にあて頭を下げ謝罪した。




「うん良いよ、俺も売り言葉に買い言葉だったから。護衛の二人が声をかけてくれたからね、二人にはお礼を言った方がいいよ、でなければ今頃水死体だったしね」




「王子さま、それは私達二人の役目で御座りますればお忘れ下され」




「俺もいつも狙われている状態だから、少し過敏になっていたみたいだね。影供くらい付いてもらった方がいいかな、ん~・・ねぇ、皆に要らぬ心配を掛けているしみたいだし」




「そうして頂ければ総司令も泣いて喜びます、是非お願いを申しあげます」




「彼方の名前は、・・ああそうか直には言えないよね、後でそっと教えてください」




スイは二人が会話をしている間、王子と呼ばれている少年を観察していた。顔は確かに似ている、王妃を男の子にしたら間違いなくこのお顔になるだろうと思った。それと同じしぐさのくせも、左手に右手の肘をのせて中指の先で顎を突っつくしぐさ。スイは両目に溢れる涙を抑えきれなかった、わたしは二人目の王子様に出会えた、王とのかけ橋はわたしがしなければ。




「リューキ王子、ツールガルラのお父上様にお会い下れませ、必ずや支援をして下さるはずです」



「みんなは俺を王子と呼ぶけれど、それは勝手な思い込みかも知れないのだよ。それに俺はきっと父親が欲しい歳は過ぎたと思うよ、あ~・・それにツールガルラの王様が父親と決まった訳ではないしね」




「ですが、貴方様方が言うこの国先行きに支援をして下さる国が沢山あればある程。先行きは安心のはず、お会いすべきと思いますが」




「スイ伯爵、貴女が供も連れずにここまで幾日かかりましたか。我々にはそんな悠長な時間は無いのですよ、今はこの国の戦士を集めて国軍として活動できるように教育訓練の最中。それを放り出して支援を求める等本末転倒、自分で立とうともしない奴に救いの手など、我々はそんな甘い事等考えてはいません。我々が自由を求めて生まれ出ようと言う、幾多の苦しみを乗り越えられずに倒れるならばそれまでの事。自らが目的と目標を持ち、それがたとえ失敗をし転んで怪我をしても。再び立とうと言う強い意志を持たなければ、我々には自由と言う褒美を手にする事は出来ないでしょう」




「あ~簡単に言えば、何をしたいのか分からずに騒ぐだけの奴になんか、誰も手を出して助けようって言うお気楽甘ちゃんは世間に居ませんよって言う事です。まっ、それでもと言うのなら裏が有ると言う事、変に頼って食べられたら元も子も無い。あぶねぇ~し」




「ああその物の言い方は王妃様にそっくりで御座います、普段はとても優しい方でしたが。ことに当たる時は、信じられないほど厳しい方でもありましたから」




「それってどっちの事、先の事、後の事」



「両方で御座います」



「あっそ」



「ん~・・・、そうだな~。一度考えていた事があるんだけど、幹部会議を開いて賛同が得られたら。一つスイ伯爵にお頼みする事が有るかも、ツールガルラ王と王国議会へですが」



「どの様な事でもわたくしがお役に立つのならば、命に変えても伝えましょう」



「そんなに気張んなくても大丈夫、金貸せだの兵を貸せだの言わないし」



「おっしゃるならば、王国の金庫を空にしてごらんにいれます、兵も根こそぎ引き連れて来てごらんにいれます」



「スイ伯爵って、朝早く目が覚めて使用人を泣かせているご主人様って。他所の使用人から指さし言われていない」



「良く分かりますわね」



「マジですか」



「まぁ、幹部会議しだいだから、後で連絡します」



「リューキ王子様はこれからどこへ参るのですか、出来ればお伴させて欲しいのですが」



「下宿先に行くだけだよ、それにお迎えが来た見たいだからここで一先ずお別れです」



「あ~、溝にはまった野良猫みたいな目をしても駄目です」



「まぁ、その様な、口が悪過ぎますわリューキ王子様」



「へいへい~、じぁや~ね~」




あ~、なんと言う事でしょう。あそこまで似て他人だなんてあり得ませんわ。ヴェイン王の首根っこを押さえてもでも、引きずって来てお会いさせたい。あの御気性なら、兄上のビーリュウ王子様はきっと使いっ走りにされて泣かされますわ。




スイはそんな姿のビーリュウ王子の姿を想像してクスクス笑うのだった。

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