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暗闇のトンネルから異世界へ  作者: 犬のしっぽ
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スイの想い     その二

昨夜は早めに寝たスイは、朝のさえずりを始めた鳥達に合わせた様に目覚めた。


朝の身支度を終えたスイ、いささか朝食取るには時間が早いと思い散歩に出た。


弓とクロスボウを背負った一団が、広場から郊外に出る道を無言で歩いているのを見つけたが。

スイは、歩く一団が背負うクロスボウと弓を見て驚いた。今まで見た事も無い弓の形状、弓の先端に付いたあの丸い物はなんだろうか。幾重にも重なる様な物はやはり弦なのだろうか、クロスボウの下に付いているあの金具は何に使うのだろう、そして気がついた。歩いている人達は年齢に幅が有る様に見えるが総て女性だからだ。郊外の向こうから、同じような一団が広場に向かって歩いてくる。





こちらは男性ばかり、どの小集団にも魔術師が一人同伴している。そんな一団を見ているスイに「旅のお方ですかな」との声がかかった、鋭い目をした中年の男性と、背後に従う女性の二人組が立っていた。「余り熱心に眺めていると憲兵隊に引っ張られますぞ」女性が「前線に向かう隊と、帰還した隊です」そう教えてくれた。



「あら、よく旅人と分かったわね」


「それだけ熱心に見ていれば、よほど無関心な奴でもない限り気がつくでしょうな」


「わたしったら思いっきり怪しかったかしら」


「そうですね、この風景は今は日常的なものに成っている現在、住民はそれほど目を向ける事は有りませんからね」


「好奇心は猫をも殺す、そういう観察の仕方は感心しませんな、まぁ、素人丸出しですがな」


男性はにやリと笑い、女性の方を向いて行こうと言う合図をした、女性は頷き二人は去って行く。




宿に戻って、朝食の席に付いたスイ、やはり頭からあの武器の事が離れない。



町の様子が良く見える、窓辺の席に移ってお茶飲んでいるスイの傍に一人の少年が近付いて来た。



「ツールガルラ王国伯爵、スイ・ラス・イスタム様で有りましょうか」


「そうよ、君は」


「自分は、ミーキ国国防軍ポンケト地区展開部隊総司令官、レット・オール・ラウグスタの当番兵、キジル・レオと言います。レット総司令より、スイ・ラス・イスタム伯爵様にお手紙を届ける様命ぜられました」


「あら、御苦労様。レットったら長ったらしい肩書きになったのね」


「この受領書にサインをお願い致します、それから必ず返書を頂いてくる様にも命ぜられております」


「分かったわ、少し待って下さいね」


宿の給仕をする少女を呼んで、少年にお茶をと言うと。


「自分は任務の途中で有ります、規律違反になりますので遠慮させて頂きます」



スイは肩をすくめて。


「分かったわ」




  ******************************************************************


懐かしい人物の名前が防犯部より届き、嬉しく思って居る、積もる話も有るのでお会いしたい。

それから会わせたい人物もおります故、迎えを出します、必ずおいで下れたし。


  ******************************************************************


「やぁねぇ~レットったら、期待した内容の手紙かと思ったら、これって命令書よ」



ブツブツ言いながらも、返書には、なんて書こうかしらと悪戯心が・・・・そこへ当番兵と言う少年が「簡潔」にと一言。



「君、キジルと言ったわよね。ん~ミーキ王妃に良く似ている言われている少年に会った事が有るのかな」


「内部の話を外部の方に許可なく話をするのは、防諜法違反で逮捕の対象になります」


「なにそれ、ミーキ王妃の子供かも知れない少年の事を聞くのよ、それも禁止なの」


「自分が話せば、伯爵の貴女様も区別なく逮捕ですが」


「あ~もうなんて言う所に来ちゃったのよ、うちの王子の事は諸パレなのに」


「では自分は戻ります」


「君、女の子にもてないでしょ」


「自分はすでに結婚をしています、四ヶ月後には父親になりますが」


「うそ~、君まだ子供でしょう」


「十六歳七カ月ですがこのミーキ国では成人です、何か」


「あっちゃ~ぁ、そうなんだ~、パパさんになるの~おめでとうね」


「はい、ありがとうございます。では、失礼いたします」


はぁ~、そうなんだ・・・ここではもう大人の扱いなのね。ツールガルラを含む多くの国は、十八歳にならないと成人と認めて貰えないのよね。彼が、どこか大人びた感じがしたのはそのせいなのかしら。

しかし、ミーキ国国防軍ポンケト地区展開部隊総司令官、いつサカギニシトゥ王国から独立したのよ。

訳のわからない事になっているみたい、どこかの国が独立を承認したのかしらね。隣の席にはいつの間にか朝の散歩中に話しかけて来た二人が居た。



「あら、奇遇とでも言えば良いのかしらね」


「先程は失礼をいたしました、私達は総司令官の命で伯爵様の護衛を命ぜられた者です」

「名を名乗る事はご容赦願います」


「それじゃあ話しかけられませんわ」


「お好きな様に」


「なんだかとっても疲れそうな雲行きよね」


「総司令からは時間まで、行きたい場所がおありでしたらあないせよとの許可がおりています」


「それじゃあ名高い水車を見たいわ、それと武器の工房も覗きたいわね、そうそう土木だっけそれも見たいわね」



「武器の工房は、今は個人には対応していません」


「機密扱いですから」


「水車の方は見る事が出来ます、土木関係は歩いていれば現場も見る事が出来ます」


「あなた達の言う事を聞いていると、総て半端な物しか見れない感じね。でもまあ散歩の続きをいたしましょう、何が見られるか楽しみだわ」





宿を出て、表通りに足を踏み出したスイ、賑やかな少年少女達の声が聞こえる。宿の通りの真中には水路が通り、多くの商店とギルド関連の工房とは向かい合って並んでいる。真中の水路の上に有る小さな十幾つかの橋の上には、露店が点々とならび店を連ねているし客もそれなりに群がっていた。


「あっ、王子様だ」



その声の方に顔を向けると、少年少女の集団の中に居る一人の少年に衝撃を受け。

スイは思わず声を上げ駆け寄ったのだが。


馬鹿な頭が、又暑くなった気温に溶けそうです。

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