スイの想い その一
情報統制が厳しく成る前に、かつてのミーキ王妃領に入ったスイ。
ポンケト地区の三つの村を統合し、ミーキと名付けられた町には入国から更に一月が経った頃にやっと入って宿をとった。
さてと、国王ベェインには悪いけど、どうせ偽物だろうの少年はどうでもいいわ。なにか凄く町に不穏な空気が流れている様だねぇ、まぁ、準戦時体制だから仕方が無いか。ツールガルラ王国の証明書でこのポンケトに入れるなんて信じられないわ、サカギニシトゥ王国の支配力が落ちたって言う所かしら。はぁ、遠かったなぁ~王都から徒歩で三ヶ月だもの、参ったわ。軍事偵察は明日からにして、今日はこのまま、お風呂に入ってゆっくりしたい所ね。
部屋のドアからノックする音がした、スイはドアの前に立ち。
「どなたですか」
「ミーキ町警察隊、防犯部の者です、身分証明書の確認と少しお話を聞きたいのですが」
スイは警察?防犯部って何よと思ったが、ドアを開けると二人の人物が立ってた。長身で柔らかい表情の男と、角ばった顔でがっちりした体格の男。スイは二人を招き入れた。
「警察隊?防犯部って何をするところなの、入国審査は通ったのよ」
「入国審査と警察防犯の仕事は違いますので、ご理解をお願いします」
「でっ、身分証明書を見たい訳ね」
「国の発行した証明書と、ギルドの発行した証明書がお有りでしたら見せて頂きたいのですが」
そう、背の高い男が言った。
「一枚の証明書で充分でしょ」
「いえ、二枚とも提出願えませんか」
もう一人の男が。
「別にやましい覚えが無いのなら、二枚を見られても困らないはずですが」
「あら、困るから言った訳ではないのよ、不思議に思っただけよ」
二人は提出された証明書を照らし合わせて、証明書に齟齬が無いか確認している様だ。
「ほう、伯爵家の御方がなんのご用でこの町へ」
角顔男が質問をしてきたが、それを遮る様に長身の男が言った。
「その前に、ビーリュー王子付きの乳母殿が単身この地に来るのは何か仔細が有っての事と思いますが、ビーリュー王子の捜索等ととぼけられては困ります」
「あら、私の事を知って居るのね、それと王子の事も」
「悪事千里を走るって言いますからな」
そう、角顔男が真面目な表情で言う。
「あ~、悪事って何よ、王子は悪戯が過ぎてお仕置きで旅に出されただけなのよ」
二人の男は顔を見合わせ肩をすくめた。
「所で、この町に知り合いは居ますか、差し支えが無ければ教えて欲しいのですが。
「冒険者ギルドのレットさんと、警備隊長のラビルさんの知り合いよ、元ミーキ王妃様お付きの同僚よ」
「分かりました、レット総司令にはこちらからお知らせします」
「私は巡査部長のローノ・サント」背の高い男の方が名乗り「巡査のイット・モウです」
ご協力ありがとう御座いました、そう言って二人は部屋を出て行った。
スイは、総司令、巡査部長?巡査って何よ、なんだか不思議がいっぱいありそうだわ。
ようやくスイは風呂に入り食事を終え、ベッドへ入る事が出来た、総ては明日からね。