幕間 剣舞と長
どこから湧いて来たのか、リューキ達に付いて来た九人の女の子達、リューキが衣装を着て出て来た姿を見た瞬間固まってしまった。
部屋に入り、竜貴は長い髪を後ろに纏めて細紐で締めた。取り出した衣装には見た記憶は無いが、手にしただけで着方は分かった。それがなんでそうなのかは竜貴には分からない「問題無く着れるからいいや」的な所だろうか。着替えた竜貴は腰に剣を下げ、バルコニーに出た。
「うわぁ~、うそぉ~、綺麗だぁ~」[衣装がだろ]
「小さいころおばぁちゃんに聞いたミーキ王妃様みたい」[知らないし]
「ああもうこの心の高鳴りは恋だわ、リューキ様ぁ~」[なにか悪い物食べたの]
「ああどこでも良い、触ってもらえたら死んでもいいわ」[踊り子に触らないで]
「はぁ~、同じ人間だなんて嘘だわぁ~」[うそ、君人間だったの]
「妖精~みたい~」[見た事無いから俺も見たいね]
「光の精霊様ぁ~」[後光はさしてないはずだよ]
「あたし男に生まれたかったわぁ~」[君、道を誤りそうだね]
「萌だわぁ~」[火の用人しっかりね]
リューキへの客人を連れて来た作戦部司令のラビル・ヘッセは固まってしまった、なん・・・ミーキ王妃様。ラビルは自然と右ひざを床に着き、右手を胸に左手は膝に置き忠誠と臣下としての礼を取った。竜貴は、そんなラビルに不思議そうな顔をして見つめ。「ねぇ、それって何」その声を聞いて何故か慌てる、余りにミーキ王妃様に似ておられましたのでつい。
「ふ~ん、そんなに似ているんだ」
非公式では有るが、竜貴に会いに来た長議会議長レ・トンチは驚愕した。王妃領になったこの地に、古くから住んでいたレ・トンチは数回ミーキ王妃に謁見し。その時、姓を持たない種族の彼に「国として機能し始めたらそれでは不便です」姓を持つよう説得されて姓を授けられた「わたしの生まれた世界では、トンチとは時と場合に応じて働く知恵の事を言います」レは感激し、以後ミーキ王妃に忠誠を誓ったのだ。一族はトンチの姓を大切に思い、忠誠の証に率先して奥地へと赴いたのだった。
竜貴はバルコニーの中央に立ち、静かに佇んでいた。やがて舞いが始まった、緩やかな手踊りから剣の舞へと移る。静から動へ、緩やかに激しくとその踊りは移り変わりその所作動作は剣の極意をあらわしていた。ラビルとレは驚愕した、それは遠く昔から神聖神殿に伝わる神竜、王剣の舞。神官総長が年に一度舞う、神へささげる舞でもある。ラビルもレも、その舞を見たのは三度しか無かったが。竜貴の舞姿は神官総長の舞をはるかに凌駕して居ると感じ、ただ絶句するだけだった。
舞はやがて終わり、二つの剣を胸の前で腕と共に交差し礼をする。竜貴は言う、所詮双剣の舞いは舞いでしかないね、チョロチョロ傷は付けられるだろうけどさ。敵を倒すには一本の剣で確実に切る、刺す、ぶっ叩くに限るぜ。女の子達は竜貴のその物言いに、あ~・・男の子よねぇ~と思うのだった。
ラビルは竜貴の前に立ち、お客人を紹介したいのですが宜しいでしょうか。そう言ってレ・トンチを手招きした、長会議議長レ・トンチ殿ですと紹介された。
「長会議・・なんか変だね、長老会議とでも変えたら」
「トンチ殿、早速駄目だしですな」
「いやいやラビル殿、中々良い呼び名付けてもらえたのですぞ」
「で、今変えたばかりだけど、長老会議議長の長老さんがこんな小僧になんか用かな」
「小僧などと恐れ多い事ですリューキ様、用と言うのは先日伝書の鳥で届きました軍の編成の仕方で部隊の編成が終わり、それぞれ訓練に入りました。しかしながら部隊編成から漏れる人員が出ましてな、得意の武器がバラバラで混成団にも組入れられないと言う。個性的な連中が居ましてな困っているのです。それと魔術師は気位が高いので、余ったからと外せばへそを曲げるし。それは使える魔法が固定して居まして、どうしても予備部隊に成ってしまうのです」
「分かった、ラビルさん俺の直轄部隊にするからこちらに送る手配をしてください」
「どうなさるのですか」
「傭兵で遣って来た人達でしょう、天国に行きたくなる程鍛えます」
「傭兵と良く分かりましたな」
「軍で個性的な武器なんてろくなもんじゃないですよ、軍は要領と規則と規律です」
「受け入れられないなら覚悟しろと、ですか」
「ラビルさん、殺し合いです。半端な覚悟の連中は必要ないですからね、勘違いは厳しく直してやらないと、死の世界に行って泣くのは彼らです」
「ラビル殿、聞きしに勝るお方ですな」
「ええ、賢王の器と思います」
「あ~、俺ってここに踊りに来た訳じゃ無いよなぁ~、剣を取りに来たんだねぇ~」
あ~なんもかんも出鱈目ですよ~。