ゲリラ戦と剣舞
敵の拠点にゲリラ戦をしかけ、物資の搬入を妨害し。敵拠点に侵入させた工作員によって、井戸の使用を不可能にする事が出来た。
敵拠点の井戸への工作は、可能な限り一斉に行った。バラバラに工作を実施すれば、通報を受けて警戒が厳重に成り工作が難しく成るからだ。又周辺の地下水の流れを、土魔法と水魔法で遠く切り離した。
彼らの拠点勢力は歩兵一個大隊を基本に置き、騎馬中隊と弓兵中隊、魔法一個区隊で混成されていた。
水の確保には彼らは必死に成ったが、護衛隊・輸送隊への行き帰りに俺達の部隊はゲリラ戦を展開し。さらに水の確保に出て兵力が減じた敵拠点へ、徹底した中長距離での攻撃をも行った。昼夜の監視と攻撃離脱、神経戦おもあの手この手と繰り返した。その為、敵の拠点放棄が川に遠い所から始まった。まだ敵の大規模攻勢の動きは見られない、敵本国へも諜報員を派遣しているが動く気配は見られないと報告が来るばかり。竜貴には、何か不気味な意図が有ると感ずるのだが。この作戦前から行っていた敵連絡通信網への我が方の攻撃は更に熾烈を極め、敵の情報を八割を封鎖した。魔法が有る限り、完全な封鎖は無理なのだ。
竜貴は今日、下宿先のナミバさんの所に向かっていた、三人組とどこから湧いたのか女の子達数人と。三人組とはチームリューと名付けて行動している、彼らの今の立場は俺専属の伝令兵で階級は兵長。納得はしている様で、彼らは何も言わない。呼ぶ時はリーダーと呼ぶように、そう言ったのだがガッチの野郎め。ポロリと親方等と言いやがって、蹴りを入れてから蹴るぞと言っやった。
「リーダー、蹴ってから蹴るぞは酷いですよぉ~」
「ガッチだから良いんだよ」
「なんですかそれわぁ~、泣いちゃいますよぉ~」
「あっ、そんな事をしたら将来嫁の来る当てがなくなるぞ、彼女達が見ているんだからな」
「泣いたら嫁が来なくなるってどういう意味ですか」
「あれっ、意味の有る事言って欲しかったの」
「わぁ~、いじめだいじめだぁ~」
ぎゃあぎゃあ騒ぎながら歩いていると、突然何やら不穏な空気が漂ってくる。ギルド関連の建物や商店街が左右に並ぶ道、決して狭くも無いが広くも無い買い物道路。直接護衛を拒否している竜貴は、それが自分への悪意のある攻撃を意図したものである事を察知した。
「人ごみの中で攻撃、同時に騒乱の内に逃走か、馬鹿が、逃げる事を前提にしてお仕事ですか。易く見られましたね俺も、お仕置きはきついですよ」
一緒に付いてきた女の子達も気配を感じ取った様で、俺の顔を見て来る。
「捕縛魔法を使える人、胸の前で小さく手を振って」
三人が手を振る、敵は七人と位置を教え一人ずつ捕縛するよう頼み残りの四人を俺が捕縛する。捕縛魔法は、そのそれぞれの状況に合わせて使う魔法を俺は変えている。今日の俺は物理防御魔法で敵を包み込み固定魔法を掛け、風魔法で道路に転がし出した。落ちても痛くは無いが、衆人環視の元に出された四人はたちまち住民に玩具にされていた。何をされても痛くは無いが、襲われていると言う視覚と魔法を今解かれたら、の恐怖は精神にダメージは大きいはずだ。
どうやら頼んだ女の子三人は風魔法で捕縛したらしい、それをチームリューの三人は剣を鞘ごとベルトから外し殴って気絶させている。駆けつけて来た警備兵に引き渡し、尋問は俺がやるから風穴の牢に入れておくよう命じた。
「私ミーホ、リュー王子様に質問、風穴の牢ってなんですか」
「それは、天高く風の空洞を作って固定した、とっても見晴らしの良い牢ですよ、ミーホちゃん長い兎耳可愛いです」
「私ナナコ、それは一見透明な物に入って空に浮いているって言う事ですか」
「そうですよナナコちゃん、色白で綺麗な肌ですね、良く動く猫ちゃん耳が可愛いです」
「私チチル、高いところが怖い人には拷問ですね」
「そうですよチチルちゃん、嫌いでない人も嫌いになる高さですからね。小さなお鼻と大きなお目目が可愛いですよ」
「たらしだ、ぜっていたらしだ」
「なにがどこが誰がたらしだってフルジン、失礼な事を言いますね、彼女達に謝りなさい」
「へっ、リーダーに謝るんじゃなくて彼女達にですか」
「俺は彼女達の可愛さを肯定したのに、フルジンは否定した言い方ですよ」
「えー、俺は否定なんてしていないですよ」
「じゃあなんで俺がたらしなんだよ」
「あ~・・・口じゃあ勝てない人だったっす」
「あれっ、俺もフルジンの口には勝てないって思ってたけどね」
「うそ、口で勝てないって俺のどこの口ですか」
「ほお、フルジンには口が何か所もあるんだ、それって魔物だよね」
「うわぁ~、ロング助けろぉ~」
「俺にふるんじゃねえよ」ゴンッ。
結局ナミバさんの所へは十三人の団体で賑やかに到着した、元々宿屋の家。広いダイニンクルームで休憩、お茶とお菓子を楽しんだ。ナミバさんに今日は剣を取りに来たんだよ、俺は腰のこれだけでいいのだけど、そう言って二丁の拳銃を叩いた。
拳銃は武器の本を見て作り出したシグザウエルP226、弾倉15+1だ。後ろ腰にはコルトアナコンダ44、第一魔法も使えるから剣は要らないって思って居たんだけれど。司令長レットさんに「威厳が無い、剣を持て」反論・・小僧に威厳は最初からないです。って言ったら剣を持てば有る様に見える、断言されちまったぜ。なので仕方が無いから取りに来たっ、威厳なんて要らないのにって言ったら笑われてしまったよ。
「人の前に立つのだから時には小道具も必要よ、リューキ王子の様に若ければなおさらにね」
二階の自室に行き、剣を取りに行き、ロングソードとショートソードを持って戻った。
「ねぇ、ナミバさん。この二本の剣て一寸作りが派手でないですか、剣その物は本物だったけどね」
「そうねぇ」
「その派手さって、なんか祭りの舞につかう剣見たいね」
ナミバさんの隣に居た女の子がそう言う、熊耳の彼女は背に大きな剣を背負って居る。
「そう言えば、神への豊穣をねがう春の祭礼に良く使う剣にそっくりね」
「俺が持っていたあの衣装、特殊だったよね、いつも着る服とは全然違って居るからさ」
「それじぁ、リューキ王子は祭礼の舞を踊っていた事になるわね」
「あの衣装を着て立ってみる、なにか思い出すかもよ」
「え~、どこで」
「ここのバルコニーは広いから丁度いいわ、兎に角試してみましょうよ」
「ナミバさん乗り気ですね、分かりました着るだけなら出来そうですしね」
衣装を着た俺は剣を腰にバルコニーに立った、そして気を静め剣を抜いた。頭の中に鈴の音と笛の音のゆったりとした音楽が流れ、俺は舞を踊り始めたのだった。