シャブ中
千治、お前の田舎は何処だったっけ。
兄貴分の幹部勝田が聞いてくる「俺は、OO県のOO市っすよ、それも山の方」
あ~、そうだったな「所でな、一つお前に頼みたい事が有るんだがいいか」
千治は警戒しながら「いいかって、それって命令で」
幹部の勝田は「ん~まぁ、そういう事だ」そっぽを向きながら答える。
千治は内心「ろくな事を命令されねぇだろうし」と、ぼやく。
勝田は「実はな、ある物を隠してくれねぇかって事だ」「おやじの荷物だ」と、付け加える。
おやじはおもちゃが好きでな「でっ、ある物を手に入れて居た訳よ」部屋の天井を見ながら呟く。
おやじも、柳田の伯父貴の流れで今回はお務めだ。
「ヤバいもんを置いとく訳にはいかねぇ、前回のガサ入れではなんとか成ったが」
千治が「又、ガサいれ有るんで」と、聞けば。
勝田は「桜田門、腐っても桜田門さ」どうやら物のやさは見つかった様だと言う。
でな、物は今此処に持って来てある、千治お前の車んなかだ。
「えっ、何時の間にですか」そう聞くと。
お前が車で来たのを見てな、頼りに成るお前だ、断るはずはねぇってな。
お前、国に用事があるって言ってたよな。
「まぁ、野暮用で」千治はそっぽを向きながら答えた。
でっ、今日行くと俺に言いに来たわけだよな、律儀じゃねぇか。
勝田は「土産だ、野暮用の相手に渡しな」そう冷たく言いながら何かを投げて来た。
千治は受け取った物に目をやる「シャブ」すっか。
勝田は「野暮用の相手が欲しがっている物だろう、遠慮はいらねぇぜ」
まっ、お前の野暮用相手がシャブ中とはな「それにおやじと同じ趣味だ、物見たら」喜ぶかもな。
千治はそれを聞きながら、背中に冷たい物が流れるのを覚えた。
千治は黙って立ちあがり「では行ってきますんで」そう言うと。
勝田は黙って手をだし「ついでにこれもな」と、紙袋と黒いケースを押し付けて来た。
紙袋を指さし「それでしばらく遊んできな」尻はあったまらねぇだろうがな。
へいっ、そう答えて受け取り部屋をでる千治に「舎弟は連れて行くな」声が飛んで来た。
ケースの中身は「チャカ」紙袋の中身は「金」だろうと当たりを付けてため息を漏らした。
途中でパクられたら暫らく所か、長のお務めだな、俺の歳だといい年寄りだぜ。
昨夜の、抱いた女の乳房の柔らかさを思い出し「それは御免だぜ」と呟く。
千治は携帯を取り出し、面倒を見て居るガキの一人を呼び出す。
携帯からは「あにきさん何か仕事で」の声が聞こえてくる。
俺はこれから新潟に抜ける、途中サツに遭いたくない、サポートしろ。
バイクに乗れんの二三人居ただろう、バラけて先行しろ、適当に連絡よこせいいな。
「おす、新潟方面に先行します、連絡は気が付いた事があったらさせていただきます」
千治はその声を聞いて携帯を切った「連れて行かねぇ、先にいかせりぁいいさ」ふん。
サツに付けられる事も無く、出迎えを受ける事も無く目的地近くに付いた千治は。
先に走らせていたガキを携帯で呼び出し、一週間位旅をしなと金を置いた場所を教え。
金を見つけたら連絡を寄こすように言い、野暮用相手の家近くに車を走らせる。
相手の家近くに付く前連絡があり、ガキどもに携帯を買い換えて後は捨てる様に言いった。
しばらく連絡は要らないと告げた「用が有ったら呼び出す」の言葉をそえて。
野暮用相手を携帯で呼び出し、勝田が寄こしたシャブの入った缶を投げてやり。
「ただで手に入る代物ではない」と告げ、勝田に頼まれた物を車から取り出すと。
「これは俺の上から頼まれた物だ」山ん中なら隠し場所が有るだろうから隠せ。
後はその場所を記したもんをどっかに隠し俺に連絡し、携帯はそん時買い換えて捨てろ。
黒いケース二つと、木箱を一つ渡しながらそう言い。
缶を見ながら千治は「しばらくはそれは間に合うだろう」街にはつらぁ出すな。
そう、シャブ中になった昔馴染みのダチに声をかけて闇に溶ける様に姿を消した。
千治の幼馴染、茂は缶の中身にどの位シャブが入って居るかも気に成るが。
ケースの中身も気に成る、東京でやくざに成った千治だ、どうせヤバい物だろうと当たりは付く。
一度農作業小屋に入って、シャブの入った缶を開けて中身を確かめる。
中身を見つめてニヤリと笑い「これでしばらくは金に余裕が出来るな」と呟く。
二つのケースを見て「小さい方はチャカだな大きい方は長物かよ」又厄介な物をと独りごとを漏らす。
木箱の重さで言うと、弾倉とバラ弾って言う所か。
隠し場所にどうやって運ぶかだな、このまま隠すって云うのは人目に付くし。
ケースを見ながら明日考えようと、小屋の片隅に積まれた稲わらの中に隠した。
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服を着た二足歩行の爬虫類をみて、竜貴は不思議な感覚を覚えた。
服を着た爬虫類は「人間、何もしていないのにそれはなんだ」と抗議してきた。
あれ?、こいつ言葉を話すぞ・・・・え~なんだっけと混乱。
その時、自分に記憶が無いと悟った、だがどうして言葉が分かる。
竜貴は混乱のるつぼに嵌まって行く気分だ、だが相手に攻撃の意思は無い様なので。
銃口を降ろしたずねる、「俺は竜貴、迷子に成った様だ」ここはどこなんでしょうかと。
迷子になったと告げられた相手は「俺はこの川岸近くに有るポンケット村、そこに住むジュケットだ」どこから来たんだと言うが、竜貴は何も思い出せない。
竜貴は黙って首を振り「何も思い出せない、覚えて居るのは名前だけだ」とジュケットに言うと。
ジュケットは爬虫類特有の目を泳がせ、困惑した表情。
ジュケットは「名前しか思い出せないって、本当に記憶無いのかよ、参ったなぁ~」マジかよぉ~。
「俺はここに水の魔石を拾いに来た、拾い終わったら村に連れてゆく」だから暫らく待てと言う。
ジュケットにそう言われても、魔石とはなんだろうと思う竜貴「魔石って何」と聞けば。
「え~それも忘れたのかよ、信じられないよ」と、ジュケット。
人では無いので、竜貴には年齢が良く分からないが若そうな声で言う。
竜貴は、ジュケットが石を拾い歩く後ろに付いて歩き、益々混乱する。
ただの石じゃんと呟けば「なに、見分けも付かないだと」ジュケットはあきれる、マジだねぇ~と。
ジュケットは、見てなと言い「水よあの者の顔を濡らせ」呪文と共に竜貴の顔は水浸しになった。
こう言う事にも使える「まさか魔法も忘れたって言わないよな」とジュケットが言う、竜貴は顔を袖で拭いながら黙って首を振る。
かぁ~決定かよ、まぁそんな変な格好だ、街にでも連れて云ったら何か分かるだろう。
さらにジュケットは「一旦村に連れてゆく、村の者にも聞いてみるがそれからが問題だな」
問題、竜貴は首をかしげる。
お前なぁ、人独り喰ってゆかなきゃならないんだぞ、金が居るって言う事だよ。
あ~・・、竜貴は困った「お金ってどんなのですか」
聞かれたジュケットは「だぁ~、それも忘れたのかよ」そう言いながら頭を抱えてしまった。
とにかく「村の家に帰ってから、お前の持ち物検査な」金とか金に成りそうな物を持っているか見てみるよ。
ジュケットが、魔石を拾い集めるのを黙って見ているうちに、竜貴にもようやく魔石とただの石とを見分けられる様に成った。
一緒に探しながら歩いていて、竜貴は毛色がそれぞれ違う魔石をニ個拾ってジュケットに「これは」と差し出して聞いた。
ジュケットは「これを素手で握ってみな、暖かいだろう。これは火の魔石、こっちが風の魔石だ」この二つの魔石はな、魔術師が欲しがるんだ。
「お前が拾ったのだからお前のもんさ、二つを売れば二三日喰えるからとっときな」そうジュケットが言ってくれたので、ポーチに一緒にしまおうとしたが。
待てよと、ジュケットが「そいつは別々にしまいな、そうしないとお前が燃えてしまうぞ」そう言いながら止めて来た。
「水の魔石と火の魔石なら、なにか有っても効果を相殺するから大事は無いが。火と風の魔石同士はさ、風の魔石が火の魔石を煽って持ち主を焼いてしまう事も有るんだ、気を付けな」と教えてくれた。
ジュケットは、基本から教えないと駄目なのか「リューキとか言ったな、しばらく俺んとこに居候するか」そう言ってくれた。
竜貴は「お願いします」とジュケットに頭を下げた。