剣と弓を作る心算が・・・大工仕事と土建やさん
剣を作るとは言っても、簡単ではない。
竜貴は剣の性能に、刺す切る叩くの三種類をと思ったが。
弓はなぁー、知らんし。
竜貴は剣を作りにナミバさんの工房に行く事にした、幾ら魔法で作れるとは言っても将来は分からないが今の竜貴には材料までは集められないし。所詮なにも無い所から作るなんて、未だ未熟な魔術では無理だ、そんな訳でナミバさんの元へ。
ナミバさんの工房への道のりは、なんだってんだよこの道は、ハッキリ言って獣道だな。この国の道路行政はどうなっている、予算十の三は貴族が食って、残りの七の三は政治家食って、残りの四の三は官僚喰って、残りは小役人食っちゃったって言う所だね。ん~・・俺の汚れた靴の呪いよとんでけぇ~、全員の顔は泥靴顔になれぇ~・・一生解けない呪いを等と言いながら歩いている。
「そんな訳でナミバさん、剣の材料分けてもらえませんか。近くに鉱山か鉱床でも有れば自分達で集められますが、ここいらには精々砂鉄位しか有りません。砂鉄その物は必要ですが集めるのに時間が掛かり過ぎます、今は単純に三人組に持たせる剣を魔法で作りたいのです」
「竜貴は町の武器屋と鍛冶師を泣かせたい訳ね、でもまぁ私は刃物は作らないから構わないけどさ」
工房内には金属製の生活用日用品が所狭しと並んでいる、工房と店は通路で隔てられていて店内には。売り子らしい色白で髪は茶の巻き毛をフワフワさせ、ふっくら体形で当然の如く丸顔でそばかすが愛嬌のおねぇさんが一人立って居た。
「別に泣かせたい訳ではないけどね、既成の物はみんな出来がバラバラな作りだから一々調整なんて面倒なだけだからね」
竜貴はナミバさんの鍛冶場を覗いた、かなり大きなふいごが有るのが見える。ただ今は使われていない様子にナミバに言った、ナミバさんはどうしてふいごを使わないのかな。
「ふいごは有るけどね、ふいごを動かす人を雇う余裕が無いのよ。それに弟子を入れるには私は歳が半端でね、人を一人前に育てるのは時間が掛かるし色々とあるのよ。今は手押しの小さいふいごしか使えないから、小物の商品位を作るとか修理位しか出来ないのよ」
竜貴は工房の外を見れば、丁度良い位の小川が流れている。水車を作ってふいごと連動すれば良い、そう思った竜貴はナミバに言った。
「ナミバさん、水車を作って連動させればいいと思うよ。大工さんに作って貰おうよ、俺もここを使わせてもらうから費用は持つし。それに、叩きの動作も風の魔石を補助に入れればもう一人分の打ちも入れられるし」
「えー、そんな方法が有るの。なら私早速その話に乗るわ、ジュケットに良い仕事場を残せそう。知り合いの大工を呼んでくるわね」
ナミバは満面の笑顔でどこかへ走って行った、その間仕事場を見て回って居た竜貴は。う~ん、石炭をコークスに変えないと駄目だな、原料の強粘結炭なんて手に入るのかなぁ。
竜貴は外に出て工房を一周してみた。
「割と広いんだな、これなら幾つかの建物を作っても大丈夫みたいだけど、石炭を蒸し焼きにする装置を作りますって・・・・無理だな。大規模な魔法を使えば何者と思われて嫌な目に遭いそうだし、石炭その物の蒸し焼きの方法なんてしっかり覚えている訳じゃないし。あっ、ネジとか歯車って有るのかなそれも聞かないと」
「あ~、しかし変だな俺って?ん~・・・なんでこんな記憶がって言うより思い浮かぶんだ。可笑しいなぁ~、川岸に居た時は自分の下の名前しか覚えていなかったのに。人とふれあうと色々思い出すってか、自分の事はそんなに思い出さないって言うのもなんだかなぁ~・・だよ」
竜貴が一人ブツブツと呟いていると、ナミバさんが大工さんを連れて来た。
「リューキ、この人は水車とか色々な細工を得意としている人よ。名前はボルゾ・ゲッパルトさん、魔法は使えないけど腕は確かよ」
「俺は魔法は使えないが、そこらの魔法を使える大工よりは腕は確かだと自負している、どんな注文でもドンと来いだぜ」
大きな身体で、いかにもな筋肉おとっつぁんがやって来た、そんな感じなんだけどそれだけでは有りませんよのオーラは有りますね。
「俺はリューキ、ボルゾさんが作った水車とかは近くに有りますか、あれば見たいのですがどうでしょうか」
「おう、この近くの水路に有るから見に行くか」
「はい、では付いてゆきますのでよろしくお願いします」
そのまえにナミバさんには板に書いた図面を見せて、こう言う物を作って下さいと差し出した、ベアリングの図面だ。これの出来具合を見れば、ナミバさんの技量が分かるはず。作れれば良いなと思いながらボルゾさんに付いて行った、これだと見せられた水車は粉を碾ための物だった。やはり見ればベアリングがないので軸と軸受の摩耗が激しいし、水車の回転効率が悪いのは当たり前だと思った。ただ全体の作りはしっかりして居るので、やはりボルゾさんの腕は良いのだろう。
水車の土台を見ると、・・・・はい・・これはなんでしょうか。小川を跨ぎに水車が置いてあり、ただ普通に石を土台にし留めとして杭を打ち込んで固定して居るだけ。あっちゃ~駄目だこりゃって言う事です、ボルゾさんの腕が良いのは分かりましたが、これでは駄目すねと指摘。家の土台は固定魔法できっちりとしているのに、こんな所は手抜きなんて絶対変だと言ったら。人が住む訳ではないから固定魔法を使うのを嫌がるんだよ、そうボルゾが悔しそうに言った。
「俺は、ならばボルゾさん土台作りも事業として立ちあげましょう。魔法使いに支払う料金より、少し低い位に設定して日雇いを使えば雇用も広がるしね。こんな事は魔法使いでなければ出来ない訳じゃないし、工夫すれば誰でも出来る事だよ。それにこう言う仕事を積み重ねればさ、色々な土木作業にも応用できるから仕事の幅も広がるよ。ボルゾ土木建設事業所なんてどうかな、親方から所長になるのさ、格好いいでしょ」
「リューキ、簡単に言ってくれるな。先立つ物が無ければただの夢だ、俺はただの水車作りの親方だぞ」
「親方はお金を集める自信が無いのかい、方法が有ったら色々な人達に交渉して見るかい」
ボルゾ親方は胸を叩き。
「大金は無理だろうがそこそこ集める信用は有ると思って居る。良い方法が有るなら試す意欲も有るし頑張る体力も有るぞ」
体力は関係ないと思うけど~。
そこからは怒涛の勢いで事業の立ち上げを手伝ったり、ナミバさんのふいご用水車の作成の手伝いやら目が回る様な展開で二ヶ月が過ぎた。たった二ヶ月だがもちろんギルドも巻き込んだし、子分の三人組もこき使ってやった。持ち物に入って居た本が役立ったのは言うまでも無い、内容は頭の中にしっかり入ってしまった感じですね。評判を聞いて、近隣の街や村からも事業の引き合いが来てボルゾさんは大忙し。
日雇いで使って居た人の中から、仕事を任せる事が出来る人物を引き上げて。頭にして派遣したりと事業も広がりを見せる様に成って来た、その内独立して仕事をする人も出て来るだろう。今はしっかり基礎を積み上げて、考える事を覚えて頑張って行ければ良いと思う。たった二ヶ月だけれど、内容はとても濃い物だった。もちろん水車は今でも作って居る、ナミバさんが作ったベアリングを組み込んで。ベアリング用の油は、水棲魔獣の油がとても合うと言う事で。養殖しようかとも話しが上がっている、魔獣の養殖・・・なんか変ですね。まぁ、地下から油を汲んで鉱油が作れるまでの事だね。
ナミバさんのベアリング作りの技術力も上がり、ついでに魔法の精度も上がったと喜んでいる。今まで無かったのが不思議なんだけどね、普及すれば応用もするだろう。水車を使ったふいごの自動化は、別な意味で驚かれて見物人が集まった。もちろんタダで見せる様な事はしない、お金を取ればその分記憶に残るだろうし普及もするだろうとの作戦なんです。
事業を立ち上げる費用はボルゾさんが半分集めて来たが、それには証券を魔法で作り配当と言う概念を説明し、もちろんリスクの話もしっかりして証券を渡した、株式の普及ですね。残りはナミバさんの知人やギルドの紹介を得て、足りない分は俺が魔物狩りで稼いで出資した。
ねぇボルゾさん、最近靴顔が道を歩いてるけど、あれって新種の魔物なんですか。