ツールガルラ王国 王の間
最近、ツールガルラ王国、王都の庶民の間に一つのうわさが流れていた。
表向きサカギニシトゥ領にされてしまった元ミーキ王妃領に、ミーキ王妃そっくりの少年が現れたと。
ただ本人は、記憶があちらこちらと不確かなのだと言われていると。
「陛下、そう言ったうわさが王都サエヤヒ内を、ギルドを中心に駆け巡っています。一度探索し確認を致しましょうか、まぁ顔が似た者は幾人かは確かにいましたからな」
「今度は少年か、歳はどの位との話か」
「歳の頃12~3程との話ですが、これもうわさにございます陛下」
「歳が合わぬ、生まれていれば16だぞ」
「我が妻、ヨローラが昔、私にこう言いましたぞ。ミーキ王妃に初めて謁見した折、その幼げな面ざしに。王にはその様な嗜好が有ったのかと、思わず、おいたわしや王妃様と天を仰いだと申していたのを記憶していますが」
「幼顔のその特徴を引いているとでも、そうメイビルは言いたいのか」
「確かめた訳では有りませぬゆえ、しかとは言えませぬが、馬鹿神ならと」
「あれから16年、随分と昔の様に思えるが我は諦めた訳ではない」
「では、人選を致しますかな、陛下」
「城内にたれぞ居るか」
「スイをと思います」
「我が息子より、王子ビーリューにべったりのあの者をか」
「陛下、ビーリュー王子にも弟君探索の命をだし、世間を見させるのもと思いますが」
「スイが激怒してわしを追いかけまわすのが目に見える様じゃ、気が進まぬぞ」
「護衛など付けなくとも、スイの息子が強引に着いてゆきますでしょうか。用心に影供は付けますが、多くは無理かと」
「あれもスイに鍛えられている、余程の事が無ければ大事は無いだろうがの」
「王子は金銭を使った事が御座いませぬ、野宿ならスイが手ほどきをしていたようですが」
「スイの息子、カッチェは知って居るのか」
「夫、エイバスに育てられましたので」
「不憫な事をと言えば、二人には申し訳ないか。さてその少年が、確たる証拠の剣を持っておればよいがの、どこの世界にもおろか者はおるじゃろう盗まれたり奪われたりしていなければ良いが」
「スイにはわしから話そう、どうせおのれ馬鹿王と双剣を握って飛びこんでこよう」
「また逃げ回るおつもりですかな、陛下」
「当たり前じゃ、我を忘れた女武に立ち向かうほど愚かではないぞ」