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暗闇のトンネルから異世界へ  作者: 犬のしっぽ
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幕間   弟を探せなんて馬鹿馬鹿しい・・

父王に弟を探せと放りだされたが、探す気等さらさらないビーリュー王子。

「カッチェ、俺の親父殿は何か勘違いして居るぜ。俺は王国を継ぎたいとか等欠片も思って居ないのだからな」


「ビーリュー王子、それはとうの昔にバレバレでしょう。メイビル宰相などそれを見越して王子を外に出すよう進言したと思いますよ」


「ふん、下々の暮らしを見て何かを学び。次の王として国をいかに動かすかを考えろ、下々の者たちは王の顔色をうかがって生きて居る訳ではない・・とか」


「う~ん、もう少し、こう・・なんと云うか高尚な感じ」


「はん、折角自由に成ったのにそんな事を考えるかよ、さっさとギルドに登録して魔物相手に暴れようぜ。世継は弟やらに任せた、俺は放浪の剣士で生きる」



王子ビーリューはそんな甘い考えで旅をする気だ、カッチェため息を吐く。俺も世間知らずだがこの王子は王子らしく輪を掛けた世間知らず、まさに自分に都合よく社会が動くと信じている様だ。いずれ大きな試練が来るだろうが、その時この大甘ちゃん坊や王子はどうでるか。まぁ、影供が付いているだろうから死ぬ確率は低いだろうが、それでもなぁ~。カッチェは傍に居る自分自身に釈然としないものを感じている、この王子で良いのかと。



ギルドへの登録は、王都から離れた町のギルドで登録した。



王子の登録名は、リュー・コマ、カッチェの登録名はカッチ・ゼンター。後に、町のギルドの名誉として飾られるとは思いもしない二人はギルドカードを握りしめ町を飛び出して行った。



「カッチェよ、ギルドの登録は簡単すぎるな。どこかの国が諜報の為人を送り出して、その国が金を掛けずに長期に活動させるには最適だな、ギルドの仕事で死んでしまう可能性も有るだろうけど」



「弟君もギルドに登録して居るのでしょうかね、それより受けた仕事が終わったらどちらへ向かいましょうか」



「カッチェ、隣国レサアマルを通ってハリテマリリ王国へ、そこからヤハフタル王国を経由してトラデス・ビントラント、それからミーキに行く。影供共が親父殿に王子は弟君を探す気は無い様です、等と報告されてみろ。旅に支障が出るぜ、まぁ、サカギニシトゥ王国の暗殺団はどこに居ても付きまとうだろうからな。俺に付いている影供にはそっちの対処で忙しくさせておけばいいさ、ただ遠回りして行くと言う形を見せないとな。どちらにしたって、着いたころには奴らとの動きの決着は見えて来ているだろうさ」



「王子、少しは見て居るんですね」



「カッチ、王子は止めろ、リューかコマと言え。偽名で登録した甲斐が無いだろう」


「でっ、リューは本気で弟君を探さないと言うのですね」


「俺は思うのだが、異世界で生まれて育ったと言う弟、只者だとは思わないぞ。この世界の理から外れて居るんだ、とんでもないガキかもなとは思うぞ」


「例えばどんな風にですか」


「親父殿が言っていた、お袋の世界には魔法等無く、その代り機械文明が発達して居ると聞いたとな。機械文明がどの様な物かは知らないが、魔力に頼らず人知を集めて発達した世界だろうと思う。それが証拠にお袋が置いて行った腕時計とか言う物を見せられたが、この世界では魔法を使ってもあの様な時を刻む物は作れないだろう。実に芸が細かいと言うか細工が細かいと言うか、太陽の光が有れば永遠に動くとも言っていたし今も動いているぞ。夜は昼間の光を貯めてある所から力を貰い動くのだとさ、俺達には想像外の作りものだ。それに何百人も一度に運ぶ空飛ぶ機械とか、同じく地面を走る機械とか、地下鉄とか言う地面の下を走る車とか・・・カッチェ、俺達にそんなもの想像できるか」



「魔法も魔術も無い世界ですか、う~ん・・・ですがリューの母上は魔法が使えたと聞きましたが?」



「それだ、器が有っても中身が無いと言う状態で来たらしい。それもでっかい器だったらしい、こちらの世界に来たらその器に満杯の魔力が入ったらしいぞ。親父殿が⦅あの時は青くなった、我の何十倍もの魔力を持っていたからな⦆だと、あの親父殿の魔力をはるかに凌ぐ位だったお袋だぞ。俺はこちらの世界で生まれて育ったから然程でもないけど、弟は向こうの世界で育ったんだ、とんでもない器をもって渡って来たとしか思えない」



「それじゃああれですね。機械文明の中で育ち、こちらに来たらとてつもない量の魔力まで持った。リューはひょっとしてそんな弟君に会うのが怖い?とか、とてもじゃないが兄にとして威厳を示せないかもと恐れて居るって言う事ですね」



「カッチ何を言う、兄としての威厳なんぞどうでもいいし、こ、怖くなんぞ有る物か」


「噛みましたねリュー、それにその奥で思う気持ちの中に、母上の傍で育ったと言う羨ましさの欠片がどっかりと心に有るとカッチは読みましたが」


「五月蠅いぞカッチ、そんな気なんか有る物か、とうの昔にそんな事等からは卒業したぞ」


「ふ~ん、母上恋しが無いのなら弟君なんぞ羨ましくも怖くも無いはずですし、現に怖くなどないとおっしゃったからには兄として会えるはずですね。それに、もしかして王子、母上様も弟君を追い掛けてこちらに来る可能性は非常に高いとカッチは思います」



「それは何故だ、俺は世界渡りがそんなに簡単だとは思えない。簡単に渡れるなら、何故俺が居るのに渡ってこない」


「それは神のいたずらか気まぐれかのどちらかでしょうね、神殿から漏れて来る話を聞くと、神はかなりの気まぐれで気分屋と聞こえて来ます。言わば、我儘で子供の様などこぞの王子様みたいな性格らしいですから」


「カッチ、その王子とは俺の事か、俺の事なんだな」


「あれ、自覚ありましたか、我儘で思いっきり馬鹿な王子様」


「なんだと、喧嘩を売って居るのか」


「このカッチェ、馬鹿な王子様に喧嘩を売るほど愚かではないつもりですがね。何も知らずに連れて来られたかもしれない、そんな訳も分からず見知らぬ理の世界に来た弟君のその心情を思いやれば。兄としてはその心情を思いやり、全力をもって駆け付けるのが普通の想いと、このカッチェは考えます。あー、この馬鹿者で冷たい心持の王子様に付いて行っては、将来の私は全力で後悔するかも知れませんね。ここは思案のしどころかも、家名を継いだらこの事で、あらぬ事をでっちあげられて無実の罪を着せられて殺されるかもしれないし。あるいはこれからの旅の途中の戦いで、傷ついても捨てて行かれるかも知れないし。そんなのは嫌だから、弟君の元へ真っ直ぐ行った方が利口かもねぇ~」



「おのれ、言いたい事はそれだけか。俺も弟も成人した大人だ、何時まで親がどうのは無いだろう。確かに見知らぬ世界に望んで来たは無くとも、男ならなんとか生きて行くのが当たり前だろうが。そんな知恵も力も運も無くしては、いずれは魔物にでも殺されるだろうよ。そんなに簡単に死ぬかも知れない力と知恵等早要らぬ物、いずれ俺達の世界の理の中に消えて行くだけだ。それに、急ぎ駆け付けてもあそこまでの掛かる時間は三ヶ月。たどり着いて探したとて時間が掛かり過ぎて間に合わぬし、第一顔も分からないのだぞ、どうやって探せと言うのだ」




「あの地には、かつてミーキ王妃様の直属騎士団長のレット様に。直近警護隊長だったラビル殿、魔術師隊の副長ネル殿に執事補佐レガル殿がおります。それを頼って行くのが順当でしょう、もしかしたらもうすでにお会いして臣下となって居るかも知れません。お母上にそっくりだと、神殿からの託宣が国王様の元に知らせが有ったと聞き及んでいます。あの肖像画にそっくり・・・?・・・あー、あの愛らしい王妃様に似ているのなら、盗賊か奴隷商人に捕まってしまって。女の子と間違われて売り飛ばされていたりして、売られた先で男と知れても毎夜嫌らしい親父たちにあれやこれやとされたりしたら。弟君は可愛そうに壊れてしまうかも、有りえて怖いですよ兄上様」



「くそぉ~、最後のそれは話の締めかよ。その手で気やがったか、ずるいぞカッチェ、行けばいいだろうが行けば。俺があの手の顔に弱いのを知って居て着け込みやがって、弟を探せなんて馬鹿馬鹿しいが仕方が無い、母上に似た顔の野郎を何とかすると事でいいな」



「まぁ、素直で無いのが可笑しいけど。それで良いでしょう、行けば色々な人の面子も立ちますし」



「その色々なが面白くないぞ、俺はお前の面子を立てると言う事で良いだろうさ」


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