闇の向こうは
地元の先輩に、一万円札をチラつかされて。
又メンバー足りないからと、サバイバルゲームに誘われた。
万札目の前にして断るのは、貧乏高校生には出来ない事。
一応、二食付きならと生意気にも抵抗するが。
「おう、飯は豪華だぞ、終わったらバーベキューだ」
先輩はさらに耳元へ口を寄せ「ビールもな」ニヤリと笑った。
ゴクッ、何故喉が鳴る。
この誘いに乗った為、異世界を旅する羽目になるなんて。
異世界で、記憶を無くした竜貴の頭には無い。
真っ暗なトンネルの中を、ライトも点けずに俺は独り歩く。
トンネルの湿った岩肌に、左手の指は撫でる様に触れている。
たかがサバイバルゲームで、こんな所を歩かなきゃならないなんて。
右手に持った電動モデルガンМ4CRW、しょせん借りものだし。
右腰のホルスターには、コルトバイソン、これもモデルガンだ。
左腰には何故かロングソード、最後はこれで戦うのだ。
と云われて、子供みたいにチャンバラかよと脱力したね。
様は頭の先からつま先まで、装備一式全部借りものなんだって事。
それにこんなおちゃらけた格好、好んでしている訳じゃない。
これもバイトの一つ、メンバー足りないからこれで頼むよって。
ピン札1枚ヒラヒラされたら頷くしかない、飯付きだしな。
突然岩肌から、誰かが歩く様な強い振動が伝わってくる。
「うそ」振動その物の余りの不自然さに声が洩れ身体が強張る。
古いトンネルだ、一瞬振動で崩落するのかと思ったのだ。
岩肌から指離し、俺は走り出そうと左足を一歩踏み出した。
その一歩が自分の居た世界と、離別の一歩に成ったとも知らずに。
小間 竜貴 16歳 県立工業高校2年 地球上から姿を消した。
初めて書いて初投稿です。