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異世界に転生したけど特殊能力がないからプラプラしてるだけの話を、タイトルが長いとバズると聞いて無理やり長くしてみました!!

作者: 小野兄子
掲載日:2026/07/11

俺がため息を吐くと、この2人がめんどくさい。


「おーい、ため息吐くなんて男のくせに情けねぇぞ?…俺の時代はな ーー」


「うるせぇな老害!今テメーの説教なんて聞いてる気分じゃねぇんだわ!」


この老害ジジイに文句言ったのは、俺じゃなくてナターシャって女だからな?


なんで、こんな話をしてるかと言うと…



俺たち3人、異世界転生しちゃいました…


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


少し時を戻したい。いつがいいかなぁ…?


あ!あの時…順番待ちしていた時がいいな!


なにを順番待ちしていたかと言うと、

最近なろう系も飽和してると言うが、

未だに異世界に入り込む奴が後を絶たないらしい。


あと一人進めば神様と話せるのに…

前のオヤジがガミガミと神様に絡んでた。


もうわかると思うけど、それがさっきの老害だ。


「ねぇ?」


俺の後ろから声をかけてきた女の子が、

さっきのオッサンにキレた女の子。


「ねぇ?あのオヤジのせいで後ろつっかえてるし、

2人で【誓印せいいん】押させようよ?」


何を言ってるのか説明する前に…

信じてもらえないかもだけど俺は今日、


電動キックボードに轢かれて死んだ。


後ろに並んでいるこれから転生するであろう主人公様たちに申し訳ないほど、俺の死に方はショボかった。


だから俺の葬式なんて目も当てられなかった。

少し様子を見てみる?


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「貴史!貴史!」


泣いてるのは母ちゃんだけ。

父ちゃん酔って寝てるし、妹は…嘘だろ!?

SNSしてる?



友達も何人か葬式に来てくれてるけど、


「プッ…や…やべぇ…マジメな場面だから余計やばい…」


「RooPのキックボードで…ププ…轢かれても…普通死なねぇだろ(笑)」


クソが、もういいや…


で、ありがちの「異世界転生させてくれる」って

神様に言われて列に並んでたんだ。


神様の提案した異世界設定がOKなら

【誓印】と言って、その契約書に手を触れると向こうに飛ばされるらしい。


なのに…


なのに…!


前のオヤジのこだわりが強すぎて渋滞だ!!!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


後ろの女の子の誘いに応じようと思った。


「わかった…俺は貴史だけど…名前は?」


「私?私は…えっと…ナ…ナターシャ!」


「えぇ!?」


俺が驚いたのはこいつがバリバリの日本人顔だったからだ。


「いいでしょ?どうせ生前の名前を言っても、

このあと転生したら名前変わるんだし!」


あとで聞いたら、ナターシャ(仮)は…

西洋的な時代に行って、悪女の娘に転生し、

この優しい性格のギャップとやらで、


"伯爵" やら "王子" やら "辺境将軍" とか、


凄い地位の男をGETするのが望みだったらしい。


「まぁ、いいや…じゃ…ナターシャ(仮)!

いっせいの『せ』!で俺が羽交締めするから、

そしたら手を掴んで無理やり誓印させてくれ」


「OK〜♡」


「いっせぇの……」


「「  せ  」」


すると、オッサンよりも神様が驚いていた。


「えええっ!?ちょ…ちょっと!狼藉?狼藉だよね?俺…神よ?神の前でなにやってん!?」


無視してオッサンに誓印を押させようとしたけど…


「昭和の…力を…うぐっ…舐めんなよ…っ!」


飛影?それにしても意外とオッサンの力が強い!


「ナターシャ(仮)…は…はやく…俺…弱い…から…」


「わかってるけど…このジジイ…なかなか…力が強い…っ…わね…」


すると、あろうことか、

神様から『だりぃ』って声が確かに聞こえた。


「あー、もうめんどくさ…」


そして、神様は死んだ目でこう言った。


" 【強制オートコンバート!!】 "


「なんで『強制』だけ英語あきらめた!?」


ナターシャ(仮)のツッコミも虚しく、

俺たちはリセラマも出来ない異世界へと迷い込んだ。





気づくと俺は異世界にいた…


あれだけ散々見たなろう系のこのセリフを、

まさか自分が使うとは…


でも、たしかにこう言うしかないよな…


そう思いながら俺はとりあえず街をふらついてみた。


賑わってるレストラン、路上で鑑定をしてる人、強そうな武器屋…


(この人たちはきっと異世界転生組なのかなぁ…?)


そう思うと俺はなんて情けないんだ…

特に何かの能力があるわけではない。


さっき手のひらを空に向けて


『はぁっ!!』


とか言ってみたけど、

全然手からビームとかは出なかった。


「なんか能力ねぇかな…」


と、呟くと聞き覚えの声が後ろからする。


「おぉい!お前…俺の後ろにいた奴じゃん!?」


「えぇぇ!?」


俺は流石にやばい…


おそらくコイツは望んだ転生じゃない…

それは俺とナターシャ(仮)が原因だ。


その証拠におっさんは、

生前よりむしろ更に老けた顔にまで変えられていた。


「あの…すみませんでした。僕らが無理やりあんなことしちゃったせいで…」


俺は素直に謝った。

そりゃそうだろ、せっかくの異世界転生なのに能力もなさそうだし、顔もひどくされちゃってるし…。


「うーん…ごめんとかいいから?ゆとりだろ?お前らの世代は『ごめんなさい』って思ってないくせにすぐ口にするから ーー」


シンプルに謝らなきゃ良かった。


さすがにダルすぎたので、それとなく話を逸らしてジジイの過去の栄光を語らせると、やがて落ち着いた。


何もすることもない俺と、

老害オッサン改め『老害ジジイ』は階段に座り、

ボーッとしてると見覚えのある女が通りかかり、

こちらを見てきた。


ナターシャ(仮)だった。


「あれ?たしか…貴史とオッサンじゃん?」


「ナターシャ(仮)!お前もここの異世界の住人だったのか!?」


俺は思わず叫んだ。


ナターシャ(仮)はどうやらあの時に決めてた名前を本当にこの世界に受け入れられたようだから、 

(仮)は外すことにしよう。


老害ジジイとナターシャは、俺と会うまで随分と大変だったらしい。


「俺はよ、『酒場』で知り合った奴らと旅に出たんだけどな」


「あぁ、ギルドっすね?」


「その『ギルド』って言葉すげぇ嫌いなんだよ」


「えっ?ギルドじゃなかったら何て言うんですか?」


「だ・か・ら!酒場よ!ロマサガやったことねぇのかよ?普通は酒場で仲間見つけて旅するだろう?常識だろ?」


長いので要約すると、よくありがちな


「有能なのに無能と思われて追放されてしまった」


の逆で、本人は認めてないが、老害ジジイは本当に使えないただの老害で追い出されたらしい。


「私はね…」


老害ジジイの話が待てなかったのか、

今度はナターシャが少し老害ジジイの話に、

食い気味でカットインしてきた。


どうやらナターシャの希望が叶ったのは名前くらいで、転生先は王女の娘ではなく王宮仕いだったらしい。


「でも、王室だったらワンチャンあったろ?」


俺の言葉に彼女は首を横に振った。


ナターシャの仕事はメイドですらなく、

下級兵の馬小屋の世話係だった。

もちろん王子の側近とすら接点がない仕事だ。


「ずっと馬のフンを拾わされててね…」


「え…?」


「餌やりをしてたら、厩務員きゅうむいんの人から…馬エサの与え方が上手いとか褒められて……

それが私の異世界天職とか嫌で…逃げてきたの…」


「……」


「…ごめん、もう泣かないから…うっ…今だけ…」


ナターシャはその後しばらく泣いていたが、

理由が理由だったので慰めるのも馬鹿馬鹿しかった。





俺がため息を吐くと、この2人がめんどくさい。


「おいおい?ため息吐くなんて男のくせに情けねぇな…俺の時代はな ーー」


「うるせぇな老害!今テメーの説教なんて聞いてる気分じゃねぇんだわ!」


やっと冒頭に繋がって少し安堵したその時ーー


上空から魔族たちがこの村にやってきた。


その光景に村人たちが一斉に逃げていく。

なんとなく残ってしまった俺たちだったが、

まったく緊張感はなかった。


ーー なぜなら……


(これはチート系の勇者が来る流れ!)


そんな風にボケーっとしてると魔族たちが気づき、

俺たちの目の前に着地した。


「人間か…クク…逃げなかったことだけは褒めてやる」


「……」


(…あれ?)

(…そろそろチート様たちが来てもいい頃だよな…)


「ははは!こいつら震えておるわ!

ユーインよ、さっさと片付けてしまえ」


「へへっ…俺が勇者殺しのユーインよ!お前たち…ただでは殺さんぞ?」


ボスっぽい奴が部下に俺たちを殺す指示をしてると、老害ジジイが進み出た。


「ユーイン…だっけ?」


「あぁっん?なんだこのシケたジジイは?」


「お前なんで上司からの依頼なのに返事しないの?馬鹿なの?アホなの?」


「えっ…?」


ユーインだけじゃなく、俺も固まった。


「言葉の最初に『え』って言う奴で仕事できる奴ら見たことないわぁ…そういうとこなんだよ?

お前さ?普通はさ、片付けさせて"頂き"ますだろ?

うちの会社ならその時点で仕事任せてもらえないからな?」


(終わった…)


そう思った時に、ボスっぽいの放った言葉を俺は忘れない。



「まぁ…ぶっちゃけ、前から俺もそこは少し気になってた」



ボスっぽい奴!!?


「まぁ…本人のやる気を削いでもあれだし、

言うほどでもないかなぁ…なんて思ってたけど…

うん…若干モヤってた…と言うか…」


「…えぇ…マジすか…あぁ…えっと…すみません」


俺は勇気を振り絞って突っ込んだ。


「どうすんだよこの空気?この人たちもう魔法とかでドバーーって街を壊す雰囲気じゃなくなってんぞ?」


俺の迂闊な一言で、魔族たちが我に返ってしまった。


「あ…そうだった…!どうするユーイン?やる?」


「『はい』!すみません…挽回させて『頂きます』!」


俺は心のどこかで、ツッコミ役に回って場を回していれば、あわよくばギャグ回として成立し終わると思っていたが逆効果だった。



「あれ?あの人は?」



ナターシャの視線の先にいたのは、

まだ子供だけど何か隠された力を秘めてて、

なぜかレベルを見れる力があって、

見たらレベルカンストして…みたいな少年が現れた。


そしてあっさり手からピカって光ったものを放ち、

街もろとも魔族、そして少し社畜化したユーインも…

灰になってしまわれた…


「あわわわ…あの…すみません…魔族が現れたと聞いて来たら…襲われかけてたからつい咄嗟に……」


(チート確定…)


本物を見た俺は言葉を失った。


「え?僕…なにかやっちゃいました…?」


(来たー!よく見てたやつ!)


テンプレ通りにおどおどする少年。


しかし、小躍りしてたのは俺だけだったようだ。


「いやいや…ないわぁ…まずさ、お前『なにかやっちゃいました?』じゃねぇから…見りゃわかるじゃん?『やってる』んだわ?」


先鋒に相応しく、勢いよくナターシャが口撃を仕掛けた。

追撃とばかりに、老害ジジイがズレた指摘をする。


「まぁ俺は昔のジャンプ世代だけど、あれだろ?ゆとりたちに人気な『チートキャラ』?的な?俺たちの世代でそれやっても人気出ないからな?」


ねっとりした老害ムーブは止まらない。


「いきなり強いのはいいよ?悟空もそうだし、ただ限度があるって話し!ほら、最初はそこそこ強くても、敵の幹部あたりで詰んで、だから修行していくってとこがオモロイのよ」


「いいんじゃないすか?ほら、忙しいから面白いとこだけ見たいって層にウケてんだし…」


俺は老害を黙らせたかった。

何故ならこのチート少年は、今まで言われたことない言葉に傷ついてそうな顔をしていたからだ。


「チートはいいんだけどさ、キャラが浅いんだよ…こういうガキの主人公って」


ナターシャの言葉に完全に俯くチート少年。


「違うんだ!聞いてくれ少年 ーー」


「いいんです!!」



俺の言葉を掻き消す大声に、俺たちはビクっとした。


「実は僕もそろそろ…古典的になってきたなぁ…って思ってきて…もっと深み出したり、独自路線の転生チートキャラも増えてきたから…」


そうなのか…ぶっちゃけ印象だけで異世界系を語っていたから知らなかったが、いまそんな感じなのが流行ってんのか…


「だから、目が覚めました!そろそろこのキャラ変えてもう少し考えながら旅してみます!」


「ま、わかればいいけど?」


ナターシャの余計な一言のあと、


「あれだ!マクロスのバサラみたいなの目指しなよ?」


「世代的にわかんねぇだろ…さすがに」


俺はそう言うと、少年は吹っ切れたように笑って街をあとにした。

俺たちも振り返らず3人で、今日もプラプラする。


「なぁ?」


ふと、俺は2人の横顔を見ながら、いちばん残酷な事実に気づいた。


「一番いらないの、俺たちだよな…?」


それに対して老害ジジイは違うと言った。


「特に能力もない、顔も華がない、特技もない…いいじゃねぇか!」


「この世界に転生してくる奴らは毎日のようにやってくる。俺たちは脇役にもなれなくていい、そこで楽しいことを見つける旅だって、な?」


俺は初めて老害ジジイの意見に少し笑って頷いたが結局老害は老害だった。


「俺は…薄っぺらな転生キャラいたら説教したい」


「私は設定ガバガバだったら毒吐く!」


そして俺は今日もそんな生産性のかけらもないコイツらに突っ込みを入れていくよ…


これからも頼むな、お前たち


- 完 -

異世界もの書きたくて考えていましたけど、

やっぱり異世界系の作家さんはすごいです。


もし「面白い!」と思っていただけましたら、

ご評価をしていただけますと大きなモチベーションになります!


他にも連載中の小説もありますので、

引き続き、本作含めよろしくお願いいたします。

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