沈黙
辺りがざわつき始める。そうだよな…。せっかく召喚したのに能力を持っていないなんて…。気まずい空気が流れる中、陛下が沈黙を破った。
「静まれ!おぬしら全員忘れたのか!絶加なしに死線をくぐり抜けた勇者がいることを!アザミ様。ご安心ください。仮に加護がなかろうとあなたは我々の勇者でございます。」
沈黙を破ったあと俺に小声で言った、
「陛下…。」
「それに!測定に不具合があったかもしれんしな!」と俺に満面の笑みを見せた。捨てられたりしないのか、良かった…。
「仮に加護がなかったら死ぬ気で鍛えてもらうがな。」え…、嘘だろ…。俺は陛下の圧に押し切られ「はい…。」と返事をしてしまった。
一ヶ月後…。この一ヶ月、今の戦況やら言語やらを覚えさせられた。もちろん筋トレ、剣技などなど…。
ある日陛下が「アズマ君、君は思っていたよりも成長速度が早い。そろそろ、実戦練習に入ってもいいと思う。」といい始めた。
「実戦練習と言いますと?」
「ダンジョンへと行ってもらう。だが、安心せい。優秀な兵士とリンが一緒に行ってくれる。」
「リンを行かせても大丈夫なんですか?」浮かんできた疑問をそのまま問いかける。
「ガハハハ!君は優しいね。だが大丈夫だリンは宮廷魔法使いだからな!」陛下は自慢げに語る。宮廷魔法使いとは魔法使いの位を上から数えて四番目にある位だ。上から数えて四番目と聞くとあまり高いとは思えないかもしれないがこの世界の魔法使いには下から見習い魔法使い、初等魔法使い、中等魔法使い、高等魔法使い、最高魔法使い、宮廷魔法使い、魔導師、大魔導師、魔導王の九つの分類に訳がされている魔法使いは皆、宮廷魔法使いまでいけば凄い魔法使いと言われる。
リンってすごい人だったんだな…。
「というか、大事な娘さんをダンジョンに連れてっていいんですか?」
「大丈夫だ。行ってもらうのはあくまで一から五層程度だからな。」それなら良かった…。 「あ、それと君に渡しておかないといけないものがあった。」そう言って陛下は本を差し出した。
「これは補助的加護を得られる書物だ一文でも読めば習得完了だ。」補助的加護通称、補加。補加はスキルのようなもので条件や職業で得られるものが変わってくる。絶加と違いいきつでも得られるものだ。
「この補加は何なんですか?」
「読んだらわかる。出発は明後日になる。今のうちに補加を習得しておくといい。それじゃあ、また。」
「ありがとうございます。」俺は陛下が歩いていくのを無言で眺めた。
そして明後日向かうダンジョンにてまさかあんなことが起こるなんてあの時の俺らは知る由もなかったのである。




