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第四十三話「導く者の迷い、信じる者の声」

「よくやってくれたケイどの。 貴公のおかげで城へ攻めてきたモンスターが瓦解した。 あのままだとこの城は落ちていただろう」


 デラスク王はそう礼をのべた。 魔力水晶がなくなったからだろうか、モンスターは四散し、あとから来たパルケサスの援軍の力もあって、モンスターはほとんど倒された。 


「......いえ、結局なにもできず、宝玉も奪われてしまいました。 すみません」


 そうこの城の宝物庫にあった宝玉はなかった。 皆がモンスターに対応せざるをえず警備が手薄になったところを盗まれたようだった。


「そんなことはない。 そなたと他種族の方々、そしてパルケサスの軍がいたからこそ人命は守られた。 深く感謝している」


「でも、これで九個の宝玉が相手にわたったということですね」


 そうセリエリアが眉をひそめる。


「......そうだな。 所在のはわからないタルニードのひとつを除き、ケットシーのもつ最後の宝玉が頼みの綱だが守りきらねばならない。 各種族に連絡網をとったところ、全種族を集めて話をすることに決まった」


 デラスク王はそう語った。



「全種族を集めて、会談が開かれます。 喜ばしいことですが、今までの軋轢がありうまく行くかはわかりません」 


 そうエジェルガが不安げにいった。


「ああ...... だが宝玉もあとふたつ、もしタルニードにあったとされる宝玉か奴らの手にあったら、残りひとつ。 協力せざるを得ないのだろう。 それでティルレとパエルクの二人は?」


「治療が早かったのでもう回復していますから心配しないで大丈夫です......」


 エジェルガが微笑んだ。 気を遣ってくれているのだろう。 しかし、私は自分の判断の愚かさを許せなかった。


「ああ、だが危険すぎる場所に連れて行くべきではなかった。 つい彼女たちなら大丈夫だと思ってしまった、まだ子供なのに.....」


「それは私も二人とも覚悟の上、あなたが拒否したのについてきてしまったでしょう」


「かもしれないが...... 二人を説得するべきだった。 話せばわかってくれたはずだ」


「......確かにそうかもしれませんね。 ですが、彼女たちの意思を否定するのは彼女たちを信じきれてないということになります」


「いや...... そうだね。 そうかもしれない......」


「教師でもない私が、いつの間にか導く者のつもりになっていた……その傲りが、彼らを危険に晒したのかもしれない」


「あなたはなぜ教師になりたかったのですか?」


 エジェルガは私の心を見透かすようにきいた。 その言葉であの人のことを思い出す。


 死の病におかされてもなお私たちの未来を考えてくれていた人だった。


「......ああ、私には恩師がいた。 そのかたは若くして病でなくなられたが、人を導くとはこういうことなのだと思わせてくれた他人だった」


 (そう、私はあの人のようになりたかった...... だがむこうでもこっちでもなれそうにない......)


 その時、部屋のドアがノックもされずにあいた。


「なに辛気臭い顔してんの?」


 そこにはパエルクとティルレがいた。


「大丈夫なのか! 二人とも」


「当たり前よ! こんなのなんともないわ!」


「おいらは結構いたかったよ...... いてっ!」


 ティルレがパエルクをぶつ。


「二人ともすまなかった。 側にいてやるべきだった」 


「なにいってんの? 私たちは自分の意思であそこにいた。 それにケイがなんといっても私たちはそうしたわ」


「おいらはそうしてほしかった...... いたっ!」


 またティルレはパエルクをけった。


「二人とも元気そうで安心したよ」


 彼らのやり取りに少しだけほっとした。


「私たちはね。 でも勝手に傷つくのはやめて。 自分のことは自分で決め、責任も自分でとる。 それはケイが常に言っていることじゃない。 それも否定するの?」


「いや、それは......」


(確かに自分がみんなにいっていることだ。 それは表面的なきれいごとだったのか......)


「ケイ、今は宝玉のことを考えましょう。 パエルクさん、ケットシーの宝玉は?」


 エジェルガの言葉にパエルクがうなづく。 


「うん、いつもは守るために、選ばれた警護のケットシーたちが順番で持ち歩くんだけど、会談の日、全種族があつまるこの国に持ってくるよ」


「それは危険じゃないのか」


「でも、今までみたいに移動してたら、他の町や国も攻撃されちゃうでしょ。 この国に持ってくればみんなで守れるからね」


「確かに無差別に攻撃されたら被害が広がりますね......」

 

 エジェルガは納得したようにうなづく。


「だから、ここでみんなで守るんだってさ」


「それにしても、パエルクなんか嬉しそうね」


 ティルレがそういうと、パエルクは満面の笑みで答える。


「うん! 久しぶりに弟と会うんだ!」


「弟......」


「ああ、おいらの弟は優秀で、次の宝玉の警護を任されるんだ。 絶対に次の長になるはずさ! まあちょっと真面目すぎるところはあるけどね」 


「あんたが適当すぎるのよ。 でもあんたは長になりたくないの?」


「おいらは面倒なことはキライなんだ」


 そういうとパエルクはベッドにのって尻尾を丸め寝転んだ。


「ほんと、お気楽ね。 ケイもこんなところを少しは真似しなさいよね」


「そうですね」


 ティルレはあきれたようにいい、エジェルガは微笑んだ。


(そうだ。 今は自分のことより、宝玉、この世界のことだ。 後の事はまた考えよう......)

 

 完全に頭から振りほどけないが、そう思うようにした。



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