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第三十八話「吸血鬼の王、支配の思想」

 騒がしい城内を光でつくった煙に紛れてすすむ。 おそらくバンパイアとみられるものたちも消火で右往左往している。


「出火もとがわからず混乱しているな...... 早くルドシアークを探そう」


「おそらく彼は権威に重きをおくので玉座にいると思われます......」


「わかった」 


 私たちは中央へと進む。 そこには巨大な扉がある。 


(ここが王の部屋か)


「何の騒ぎだ......」


「どうやら出火があったもようです」


 大きな扉から中をのぞくと声が聞こえてきた。 みると、側近らしきバンパイアと玉座にすわる優男がいた。


「あれがルドシアークです......」


「よし、視界を奪う。 光よ、暗く砕けろ!」


 部屋へと黒い光を流した。


「くっ...... ここにも煙が! ルドシアークさま! 一度退避を!」


「ならぬ王はこのような些事で動かぬ、お前たちが速やかに処理せよ......」


「い、いえ、しかし......」


「......いけ」


「はっ......」


 そうルドシアークがいうと、側近は目の焦点があわない感じで、黒い光へと入って外にでてきた。


(本当の煙だったらどうするつもりなんだ。 忠誠心、いや、これが洗脳魔法なのか...... ただお陰でルドシアークだけになった)


 私たちは代わりに部屋へと入る。


(一撃で倒せば......)


「あと少しで魔王が手に入るというのに、奴らめなにをしている......」


(そういえば、ハウザーたちの姿が見えない。 ケットシーの宝玉を探しているのか......)


「!? 今のは」 


 なにかが体を掠めた。


「なんだ...... なにかがいる。 霧よ」


 ルドシアークから霧が放たれ、黒い光が吹き飛ばされた。


「くっ......」


「何者だ...... 人間、それに貴様はエジェルガ」


「王よ! このようなことをお止めください!」


 エジェルガがルドシアークに叫ぶ。


「止めろとはなんのことだ...... それは私が魔王を使役して、この世界を束ねることか」


「そのようなことをして、どうされるおつもりですか!」


「お前たちも知るように、この世界は悲しみに満ちている。 戦争、貧困、モンスター...... 私が魔王を使役しこの世を統治、全てのものを幸せにする。 それのなにが間違っている?」


「それは他者の自由を奪って成り立つ、歪んだ幸せです。 本当の幸福とは呼べない!」


「自由など愚者が与えられてももて余すだけ、私がこの世界でもっとも優れているバンパイアの王だ。 賢者が愚者を導くほうが幸福であろう」


「それが正しく、あなたが人より優れているならば、わざわざ洗脳などせずとも世界を従えられるだろう」


 私がいうと、ルドシアークは不敵に笑う。


「そうはなるまい。 ほとんどの者は愚かだ。 理知的に物事を判断できず感情が優先される。 自らなにもできずとも、できる他者を受け入れられはしまい」


「だから力で支配する...... か」


「そうだ。 正しき私により全ての者は等しく統治される。 それこそが幸福なのだ。 貴様らのような無知なものに道理を説いても無駄なこと...... だろうがな」


 ルドシアークが腕を伸ばす。


「光よ! 輝け!」


 私は目をとじると、私の放つ光球がまばゆく輝く。


(なっ、体が動かない! まさか洗脳! ルドシアークは!!)


 目をつぶっている。


(なぜだなぜこちらがわかった! いや、視認しないと洗脳できないんじゃないのか!?)


「くくくっ...... なるほど洗脳魔法を防ごうとしたのか。 だがむだなこと、霧よ」


 霧があつまりルドシアークの手に巨大な鎌が現れた。


(霧で感知されたのか! いや、それならここにはいるときに感知されていたはず...... それにさっき体になにか痛みがあった。 まさか......)


 口を動かすが、何も話せない。


「なんだ、今際の際の言葉か。 王の慈悲だ。 話すことを許そう」


 口が動く。


「霧で小さな生き物をつくっているのか......」


「ほう、よく気づいた。 褒めてつかわす」


 そういうと、ルドシアークの手のひらに霧があつまり、コウモリのようになった。


「これを更に小さくしたものを放っている。 自動で動くこれにかまれたものは、我が魔力の霧が体内に入り私の意のままに動くのだ」

 

(魔力で生物を模したものを操る。 ゴーレムのようなものか。 いや自動で動く生命のようなもの。 これが洗脳魔法の正体。 体内にはいった魔力操作......)


「......そんなに話してもいいのか」


「くくっ、もはや貴様らは動くことすら叶わぬ...... さあその首をさしだせ。 私自ら、その首を落としてくれよう」


 そういって私に近づくと鎌が振り下ろされた。 そのとき。


「ゴーレム!」


 飛んできた石鳥が鎌をはじいた。


「なんだ......」


 ルドシアークが見上げると、ティルレが天井で飛んでいた。



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