第三十六話「魔力水晶の真実、王の野望」
エジェルガの家に招かれた。 その部屋には本がつまれており、お世辞にも片付いてるとはいえない。
「あ、あの、なんの、ご用ですか......」
エジェルガは途切れ途切れにそう聞いた。 さっきよりは幾分、落ち着いているようだ。
(ただ、どうやらかなりの人見知りのようだ...... 怯えさせないように聞かないと)
「バンパイアの宝玉のこと! 魔王の魂片のことを教えなさい!」
「ひぃ!」
ティルレがそう大きな声でいうと、エジェルガが小さく声をあげた。
「こらっ、ティルレ、もう少しゆっくりと......」
「あ、あなた方、宝玉を探しているのですか......」
エジェルガがそう聞いてきた。
「ああ、どうやら亜人種族からもう六つも奪われている。 残りは五つ...... 亜人種族の方はもうバンパイアとケットシーしか無事な宝玉はないんだ」
「そうですか......」
そうエジェルガは目を伏せた。
「驚かないようだが、なにか知っているのかな」
「なにか知ってるならさっさと教えなさい!」
「ひぁっ!!」
「こらっ、ティルレ脅かさない」
「......も、もうバンパイアの宝玉は探しても無駄だと思います」
「えっ? どういうことだい?」
パエルクが私の肩から身を乗り出した。
「......その宝玉を集めているのがバンパイアの王【ルドシアーク】だからです」
「なっ!? バンパイアの王!」
「そんな、バンパイアが魔王を復活させようとしているの!」
「......は、はい。 バンパイアは他の種族を見下し、自らがもっとも優れている種族だと思っています...... ですから、魔王をよみがえらせ、それを使役しようとしているのでしょう」
「まさか、バンパイアが魔王復活を狙っているとは...... まあ、あり得ないことじゃないか」
「でも、どうするの! もう七つあいつらが持ってるよ。 残りを守らないと!」
ティルレが焦るようにいうと、エジェルガが首をふった。
「いえ、八つでしょう。 ......パルケサス王国はバンパイアに支配されています」
「えっ!? パルケサスが!」
「はい、前からパルケサスはバンパイアに支配されていました。 私は何とかしようとしましたが...... どうしようもなく」
エジェルガはそういってうつむいた。
「パルケサスがおちていたなら、デラスク国やピクシーたちの森じゃなく、宝玉を狙っていたのかもしれない」
「そうか。 それで私たちに干渉してきたのね」
「でも、どうするのさ。 パルケサスは軍事国家だよ。 デラスク王国も攻められたら負けちゃうかもしれない」
パエルクが耳元で私に聞いた。
「ピクシーと同盟しているから、デラスクが攻められても亜人種族が協力して防衛できるかもしれない。 ただ......」
「魔力水晶でモンスターを操れる......」
エジェルガがそういう。
「そうか、あれはバンパイアのものだったのか」
「ええ...... バンパイアは魔法の研究が進んでいます。 魔力水晶も研究の結果のひとつ」
そういうと、エジェルガは机からひとつの水晶をだした。
「それは!」
「......そうです。 これが【魔力水晶】」
「それをなぜエジェルガが? バンパイアでは一般的なものなのか?」
「いいえ、つくられたのは五個程度」
「それをなぜ君が?」
「これは私がつくったものですから......」
「あんたがつくったの!?」
「はい王の命で......」
エジェルガが唇をかんだ。
「これでモンスターを操れるのか」
「ええ、ですが使い方しだいでは危険なものです」
「モンスターになるんだな......」
「それを知っているのですか!?」
エジェルガが驚いて目を見張る。
「ああ、これでリザードマンや人狼がモンスターになったのをみた」
「......そう、もう使ってしまったものがいるのですか......」
そういってエジェルガは唇をかんだ。 どうやらかなり後悔しているようだ。
「この水晶は魔力を凝縮、結晶化させたもの。 その魔力を使いモンスターを制御できますが、その対象をモンスター化することもできます」
「それが原因でみんな困ってるのよ!」
そうティルレがエジェルガを責めた。
「......すみません。 それは予期せぬ副産物だったのです。 王は魔王のような力を得ればモンスターを使役して他の種族も救われると...... そう説得され作り出したのですが......」
「それは支配のためだった」
「はい...... それを知り、なんとか阻止したくて、文献を漁りましたが、まだ対抗策はありません」
「バンパイアを裏切るの?」
パエルクがきくと、エジェルガは悲しげな顔をする。
「......私が力を貸したのは、自分の知識が人のためになければと思ってのこと、バンパイアの支配を望んでいたのではありません」
エジェルガがうつむく。
「まず今は、宝玉を全て集めさせないことだな」
「それなら、ルドシアークを止めるほうが早いんじゃない」
パエルクがそういった。
「そうだな。 しかし、バンパイアの国、ベルカーシアにははいれない」
「おそらくですが、パルケサスにルドシアークはいます。 彼の洗脳魔法は効果範囲があるはず......」
「でも、パルケサスは兵士も多いし、国に潜り込むのは簡単じゃないわよ」
「それなら、おいらたちに任せてよ。 パルケサスには仲間も大勢、いるからさ!」
そうパエルクは両足でたち、胸を張っていった。




