第三十三話「樹海の女王、千年の記憶」
「ガガンがついてきてくれるのか。 助かる」
「ああ、アルラウネの土地は危険だ。 他のものはつれてこなかった。 刺激したくはない、我々もアルラウネに話があってな」
そうガガンが厳しい顔でいう。 アルラウネに話をするために私たちは【ミレソールの樹海】に向かっている。
「対話できないの?」
ティルレがいうと顔がくもる。
「我らと隣接するため、何度も小競り合いがあったから対話を試みたが、話もきいてもらえぬ」
「アルラウネはどの種族とも関わりをもたないといいますしね」
クルスがいうとパエルクもうなづく。
「まあ、おいらたちもあったことがないね」
「アルラウネは人種ですけど、植物から生まれた亜人種族。 他の亜人種族や動物なんかは拒絶してるみたいですね」
(リオネがいうように本にもそうあったな。 彼ら亜人種族はどうやって知性を獲得したんだろうか...... 進化か?)
「みえたぞ」
そこには樹海が広がる。
「すごいな」
うっそうとした木々のなかをすすむ。
「ああ、この樹海は年々広がっていてな。 我らの領土まですぐなのだ。 だから広がらぬようアルラウネに話をしたい」
「まあ、そうしないとアルラウネと戦争になっちゃうもんね」
パエルクはクモの巣をいやそうに避けながら、私の肩でしっぽをふっている。
「うむ、それは避けたい。 互いになんの得もないゆえな。 ただ彼女たちは話し合いにも応じぬ」
ガガンが首をふる。
「全てが女性の種族ですか。 みたこともありません」
リオネが不思議そうにいった。
「かなり強い。 小競り合いで負傷者がたえない。 巨大な植物を魔法で操る。 ゆえにこの樹海で戦うのは不利だ」
「まあ、話し合いで解決しよう」
「そうなればいいけどね...... くるよ!」
私にティルレがいった。
「地面がうごいた!? いやちがう!」
それは地面がうごいたのではなく木々の根っこが動いていて、持ち上がるとこちらに振り下ろしてきた。
バシィィン!! バシィィン!!!
根が地面に激しく叩きつけられた。 私たちはそれをかわす。
「くっ! アルラウネ! 話し合いにきた! 攻撃をやめてくれ! これはあなたたちにも関係のある話だ!」
反応はなく、木の根がタコの触手のように振り下ろされる。
「ぬう! 話し合いもせぬか! ならば!」
ガガンは巨大な斧を振り回し木の根を切り裂く。
「では我らも!」
「はい!!」
リオネ、クルスも剣をぬき木の根を切り裂く。
(アルラウネの姿が見えない。 それなら)
「みんな目をとじてくれ!」
それを確認すると、光球を空に放つ。
「光よ! 照らせ!!」
空に放った光球が、昼の太陽のようにまばゆく輝く。
「きゃあああ!!」
周囲から悲鳴が轟く。
「動いていた木々が止まる......」
「どうやら、この木々がアルラウネの魔法のようだ」
ひとつの木々の幹に女性がいた。
「なんのつもりだ......」
アルラウネは眩しいのか、まばたきしながらこちらをみた。
「重要な話がある。 長へ伝えてくれ」
「......お前たちと話すことなどない」
「そうも、いかない。 魔王に関わることだからな」
ガガンがいうと、驚いたように回りを見回す。 動いていた木々からアルラウネたちがでてきた。
「魔王...... それは...... 本当なのか」
「ああ、宝玉【魔王の魂片】がもう四つ奪われている。 もしかしたら他にも奪われているものがあるかもしれない」
「しかし......」
「かまいません。 つれてきなさい」
奥から声がする。
「長のところにつれていく」
アルラウネたちが森奥へとすすむ。 私たちはそれについていった。
そこには見たこともないほどの巨大な木があった。 その幹の中央に一体化したような女性が佇むわ。
「私がアルラウネの長【カルネアス】です」
「私はケイです」
「それで魔王の魂片が奪われているとのこと」
「はい、もうゴブリン、リザードマン、人狼族、そしておそらくピクシーのもとにあった宝玉が奪われている模様」
「そうですか...... やはり運命とは避けられぬ無常なものですね......」
そうカルネアスの美しい顔が険しくなった。
「無常......」
「私は魔王がいた時代より生きていますから、このことは予見されていたことかのです」
「......そんな。 千年は前のことだ」
「アルラウネならばありうるかと......」
リオネがいう。
(そうか、植物だったか。 樹齢ならありうるか)
それからカルネアスは静かに語りだした。




