第十三話「魔力の風、夕焼けの誓い」
私とリオネはおばばさまがいるという郊外の森へときた。
そこには小さな小屋がある。 彼女は王宮暮らしが窮屈らしく、静かなここに居をかまえたという。
「おばばさま、リオネです」
「おはいり」
中から声がして、私たちははいる。 その部屋は本棚が壁一面にきれいに並べられており、図書館のようだ。
「ん? その子は人間かい?」
灰色の人狼はそういった。
「ええ、我が国を救ってくださったケイどのです」
「なるほど、聞いてるよ。 噂のゴブリンたちの指導者か」
そういって私をおばばさまはみた。
「ケイです。 今日は突然、押し掛け申し訳ございません」
「ふむ、それでなんの用かね」
「ハウザーがモンスターを操ってたらしいの。 そんな魔法やアイテムのこと知ってる?」
「......モンスターを操る。 それは魔王ぐらいしか聞いたことがないね」
「魔王......」
「ああ、かつてこの世界を支配しようとした魔王がいた。 そのものは魔法にたけモンスターを操ったとされるんだ」
「そんな者がいたのか」
「遥か昔の伝承です」
「もし魔法のアイテムなら【ダンジョン】から見つけてきたのかもしれないね」
「ダンジョン?」
「世界のあちこちにあるんだよ。 モンスターの住みかだ」
(そんな場所があるのか)
「ふむ、そなた、妙な魔力をまとっておるな」
「えっ? 魔力......」
「魔法は魔力を練って使うのです」
リオネがいう。
「魔法はスクロールから覚えるのではないのですか?」
「それは誰かがつくったものだろう?」
(そうか、元々がないとスクロールもつくれない! それじゃ魔法はつくれるのか!)
「誰でも魔法が使えるのですか!」
「理屈ではね...... ただ本人の資質。 魔力の質や量によって使えるものは限られるよ」
「おばばさま! 魔法のこと詳しく教えていただけませんか!」
そう私は頭を下げた。
「そこまでして、そなたはなぜに魔法を欲する」
そうおばばさまは怪訝な顔で私の目を見据える。
「無論、興味もありますが、私が覚えることでゴブリンたちに伝えられればと考えております」
「魔法をゴブリンに?」
「ええ、ゴブリンたちは装備、訓練ともに練度もあがりましたが、人狼との戦いで個体差の違いもありました。 相手の戦術によっては壊滅することもあるかもしれません。 できるだけ、対抗策がほしい」
「それで魔法か......」
おばばさまは少し考えた。
「おばばさま、私からもお願い、 ケイどのは私欲にいきるも人ではありません。 ゴブリンたちも無償で我らを助けてくださいました」
リオネがそういってくれた。 おばばさまは私の目を見据えた。
「よかろう。 単なる我欲ではなさそうだ。 そなたに魔法を教えよう」
「ありがとうございます!」
それから、リオネとともに魔法を教わることになった。
「魔法とは魔力を使い、事象を起こす方法のこと。 よくみよ」
おばばさまは杖を振るうと、杖の先に火の球が浮かぶ。
「おお!」
「このように、魔力をもちそのイメージを具現化する。 まずは魔力を感じねばならぬ」
「魔力を感じる...... とはいえ風しか感じませんが」
「そうですね」
「最初はそうだ。 魔法とは自由なもの。 心が作り上げるものたといわれておる。
(心が作り上げる...... よし、何度でもやってみよう)
それから何日もおばばさまのもとにかよい、魔力を感じる修行をする。
「だ、ダメだ...... なにも感じられない」
「わ、私もです」
「そなたたちのもつ常識が、現実と異なる事象を受け入れられず阻害しておるのだ」
(常識が邪魔をしている...... 確かに魔法なんてこの世界にくるまで信じてはいなかった。 頭が固いのか)
「そなたは、異界よりきたといったな。 それでこの世界とはどうちがう?」
「えーと、そうですね。 モンスターがいます。 それに亜人種族も」
「そうだ。 そなたの常識は崩れておるはず、そのようにあるがままこの世界を受け入れよ」
(確かに私の常識は狭かった。 この世界にきたことで常識の許容範囲が広がったはず...... 魔法も受け入れられるはずだ)
目をつぶり、できるだけ偏見をもたず、世界をみてみる。
森に心地よい風がふく。 そこからみえる赤い夕焼け空は、その世界を美しく彩る。
(美しい...... 今までは余裕もなく、ただがむしゃらに生きてきたが、この世界はとても美しい)
ただ無心になっていると、周囲に光の帯が舞うようにみえた。
「光の帯......」
「そうだ。 それが魔力...... それを練るのだ」
(練る...... いや、わかる。 力の使い方がわかる。 そうか)
目を閉じると、体の回りに光の帯が私の意思に答えるかのように集まり、その姿を変える。
「ケイどの!」
リオネの声で目を開けると、手のひらの上に回る仄かに輝く光の球があった。
「ふむ、そなたの属性は光......」
「光の魔法!? 聞いたことがありません!」
「そうだな。 私もみたことはない...... やはりかわった男だな」
そうおばばさまは笑った。




