第十二話「反乱の牙、炎に沈む」
「盾隊! 前へ、槍隊! 弓隊も続け!」
盾隊が人狼たちの攻撃を防ぐ。 そして槍隊が隙間から狙い、弓隊が矢をはなった。
人狼は速く、その動きと力で盾隊を押してくる。
(確かに一人一人が強いな。 すばやい動きで槍や矢がほとんど当たらない)
ただ人狼たちも固い盾隊の壁に阻まれ、前進できずにいた。
「よし、皆武器をおいて盾隊に、加勢しろ」
「なにをもたもたしている!! そんな脆弱なゴブリンどもをさっさと切り殺せ!」
ハウザーは後ろで苛つき怒鳴っている。
「しかし、盾が固く貫けません!」
(いくつかの盾をあわせた特殊な盾だ...... そう簡単には抜けない。 向こうも疲労でかなり押す力が落ちてきてるな)
みるまに人狼の動きが鈍り始めた。 身体能力は高いが持久戦には弱そうだった。
「よし! 狙え!」
私が声をあげると、周囲からビュン、ヒュンと風切り音がして、人狼たちに向かって矢が放たれる。
「なっ!? 矢だと! 伏兵か!!」
次々と悲鳴が聞こえ、人狼たちが矢に当たり倒れていく。
「ハウザーさま! 撤退を!」
「逃げる!? ありえねえ! 周囲の弓を殺せ! 近くにいるはずだ!」
「矢をとめろ!」
何人かの人狼が周囲に散ったと同時に私が叫んだ。
「がはっ!!」
「ぎゃっ!!」
茂みから槍がでて周囲に散った人狼が地面に転がる。
「また矢をいかけろ!」
周囲から矢が人狼を狙いうつ。
「なんだ! なんだこれは!!」
人狼たちが劣勢になると、ハウザーがうろたえている。
「よし、槍隊、弓隊、武器をもち攻撃を!!」
前方の盾隊の隙間から槍隊、弓隊が攻撃を行うと、次々人狼たちの部隊の陣形が崩れていく。
「くそっ!!」
「あっ! ハウザーさま!!」
ハウザーは味方を捨てて逃げだした。
その後ろにリオネが風のように素早く近づくと、その剣を振り下ろした。
「ぎゃあ!!」
斬られたハウザーは倒れた。
「よくやってくれたケイどの。 デススネイルだけではなく、反乱分子まで捕らえてくれるとは」
そうガルキア王はいった。 私たちは城にもどり状況を話しにきていた。
「ゴブリンたちがよく戦っただけ、私はなにもしておりません」
「......しかし、数が上回るとはいえ、精鋭の人狼たちを死者もださず討ち取るとは、驚くべき強さだ」
「はい、よく訓練されており、ケイどのの指示のもとハウザーの人狼部隊を容易く撃破しました」
そう、リオネもいう。
「ふむ、こちらの斥候もそういっておった。 我らが到着前に決着がつくとは......」
王は部隊をひきつれてあの場にきていた。
(どうやらハウザーの企みは露見していたようだ)
「それにしても、ハウザーはデススネイルを自分が操ったように言っていました。 モンスターを操るのは可能なのですか?」
「......ふむ。、聞いたことはない...... なにをしたのかはわからぬ。 アイテムか魔法か...... ハウザーを尋問して話を聞くしかあるまい」
(そのアイテムなり魔法なりを渡した、協力や裏で糸をひくようなものがいるかもしれないな)
「だが、此度の件でゴブリン族との交流の必要性を感じた。 そのように族長によろしくお願いしてもらえまいか」
「わかりました。 私が伝えましょう」
そう承諾して城からでる。
「それにしても、ハウザーの伏兵に気づかれていたのですね。 兵が少なかったのは周辺に伏兵をおいていたからですか」
「ええ、何かしてくるのではと...... 私たちが万が一勝つなら、彼らにとって反乱のチャンスが減るからね。 かなり広範囲に偵察をおいたんだ。 まさかモンスターを操ってるとは思わなかったけど」
「モンスターを操る...... おばばさまなら何かご存じかしら」
「おばばさま?」
「ええ、私の祖母で魔法を使えるのです」
「それは興味深いな。 正直、何か戦力になることがないか考えてたんだ。 魔法が使えるひとなら何かヒントになるかもしれない。 紹介してもらえないかな」
「ええ、ではすぐにいってみましょう」
私たちはそのおばばさまという魔法使いに会いに行くことにした。




